飼い犬・番外編
『犬の居る生活』 =1=(涼介視点)
「うわ・・・もうこんな時間かよ、潤也の奴、機嫌悪いだろうな」
マンションの呼び鈴を押すのを止め、俺は自分の鍵でオートロックを解除してエレベーターに乗り込んだ
時刻はもう、深夜過ぎ・・・
エレベーターの低い昇降音を聞きながら、今日何度目かのため息が漏れた
潤也とこのマンションに同居するようになって、早いもので、もう1年になろうとしている
ちょっとした事情で1年間の休学の後、復学した俺は今年3回生になり、みっちゃんの伝であちこちの動物病院をバイトで行ったり来たりしている
たまたまこの地域で獣医が不足している・・・という事もあって、ありがたいことに引っ張りだこ状態
必然的に
学校のない週末はもちろんのこと、平日の深夜まで実習・・・なんて当たり前で、特に最近こんな風な深夜の帰宅が続いてしまっている
潤也とは同じ大学・・・とはいえ、専攻が違う
必修科目が主だった去年までは、結構同じ授業とかも取れて、一緒にすごせる時間も多かったのだが、今年からは専攻授業優先で、家に居る時ぐらいしか一緒に過ごす時間がなくなっていた
それなのに
この、連日の深夜の帰宅・・・・だ
溜め息だって、洩れる・・・というもの
なんだってそんなにバイトしなくちゃならないのか・・といえば、自分で生活費くらい稼ぎたい・・そんな意地だ
知らない間に・・・とはいえ、こんな分譲マンションを俺名義で購入しやがった、猫をかぶった猛犬とその飼い主に対しての
「ただいま・・・」
密やかな声でそう言うと、いつもならどこからともなく突っ込んでくる物体が・・・やって来ない
・・・・・・・まさか・・あの野郎、また・・・!
最近続いている不愉快絶好調・・・!な状況が頭に浮かんで、俺はほとんど駆け足状態で寝室のドアを開け放った
「っ、やっぱり・・・!」
俺の身長にあわせたキングサイズのベッドの真ん中・・・
そこに
シルバーグレイの毛並に寄り添って眠る、ブルーグレイの髪の持ち主
この世に二人と居ない、俺が一番好きな色と柔らかな髪質をした潤也が、この一年で信じられないくらいでかくなった・・・シベリアンハスキー犬の、ラッキーと一緒のベッドで、眠っていた
このラッキーは、ちょうどこのマンションで俺達が一緒に住み始めた日、潤也が拾ってきた仔犬・・・だった
どこかの性質の悪い連中に散々痛めつけられた後だったらしく・・・意識不明の重体でみっちゃんに診て貰って、奇跡的に回復した
俺と再会できて、仔犬も奇跡的に助かった、・・・とてもラッキーな出来事ばかり・・・というのにあやかって、潤也がその仔犬をラッキーと命名した
当時は栄養失調でやせ細り、痛めつけられて血だらけ・・だったせいもあり、とてもシベリアンハスキーには見えなかった
病院から退院してこの家で飼うようになってから、グングンと大きくなり・・・気が付けばその種類の中でもかなり大きいと思われる立派な体格を持つ犬に成長していた・・・という次第
今では、突進されると俺の方がラッキーに押し倒される・・・勢いで、面白くない事この上ない
何しろこの犬
潤也を飼い主と認識し、俺の事は同居人・・・としか思っていない雰囲気ありありで
しかも、どうやらコイツ、潤也を飼い主兼・恋人と思ってるらしく・・・
俺に対して露骨にライバル心剥き出しで
何かにつけて俺の邪魔ばかりしてくる
寝室に出入り禁止・・・!と言いきかせているにもかかわらず、俺が居ないとすぐ、こんな風にまるで潤也の恋人気取りで一緒に寄り添って眠っている
いつもなら、帰ってきた俺に先制の体当たりタックルをかまして、自分の方が上だ・・・!と、いう事を誇示することを忘れない、ムカつく犬
それでも・・・まあ
ここ連日のように一人ぼっちで過ごさせてしまっている・・・潤也の事を考えれば、例えムカつく気に入らないラッキーでも、居ないよりはまし
少なくとも、一人で寂しい思いをしてはいないはずだから
そんな風に、少し怒りの熱を冷ましてから、俺はラッキーを引きずりおろしてやろう・・・と近寄った、途端
「グゥゥゥゥゥ・・・・ッ!!」
ラッキーが俊敏な動きで飛び起きて、潤也を守るかのように唸り声を上げて俺を威嚇する
「・・・ほぅ、俺とやりあう気か?いい根性してるじゃねぇか」
パキパキ・・と指を鳴らして臨戦態勢を取った途端、そんな俺を無視したラッキーが、「う・・ん・・・」と寝返りを打った潤也のほうへ振り返り
「・・・キュゥン・・・」
と、たった今俺に対して取った態度とは正反対の、らしくないもない妙に心細そうな・・・可愛らしい鳴き声を上げて、潤也の顔をペロペロ・・・と舐めている
「・・・・ん?あ・・・ラッキー・・・ごめ・・もう泣かないから、だいじょう・・ぶ・・・っ!?」
舐められて意識が戻ったらしき潤也がそう言いかけて、俺の存在に気が付いて、慌てて布団を引き被り丸まってしまう
「じゅん・・や・・・?」
薄暗い部屋の中で、確かじゃなかったけど、潤也の瞳が潤んでいた
おまけに・・・!
ラッキーの奴がジロリ・・・と俺をねめつけて俺に近寄ってきたかと思ったら、俺の服の裾を咥えて潤也のほうへ引き寄せようとする
「っ!お・・まえ・・・!」
意外さに目を見張ったら、人間なら『フンッ!』とでも言っているのだろう・・・不意にそっぽを向いて寝室のドアへと向かい、ドアに伸び上がってドアノブを開け、部屋から出て行く
ご丁寧に
バタンッ!!と、露骨に不機嫌さを示す勢いでドアに体当たりして、その戸を叩き閉めて・・・!
・・・・・・・・ど、どこまでも可愛げのない奴・・・!
そう思っている時点で、認めたくはないが既に俺の中でもラッキーは、ただの飼い犬じゃなく、ライバルで、同居人・・・と認めてしまっている、と思うほかない
はぁ・・・っ、と軽く最後のため息を吐き、俺は潤也が丸まっている膨らみの上に覆いかぶさった
「・・・潤也」
かろうじて布団から出ていたブルーグレイの髪に唇を寄せ、その名前を呼ぶ
途端に潤也の身体がビクンッと揺れて、一層その身を硬くしてミノムシ状態を強化してしまう
・・・・・・・・まいったな
こうなってしまうと・・・頑固で意固地な所のある潤也はなかなか機嫌を直してくれない
まぁ、ラッキーなんかに俺の代わりを求めた俺が、馬鹿なんだからしょうがないのだけれど
ゆっくりと、そのブルーグレイの髪を梳き、撫でていたら・・・ふと、昔の事が脳裏に甦った
そういえば
この話は、まだ潤也にしていなかったはず・・・
「・・・なぁ、潤也?アビシニアンっていう猫、知ってるか?
ブルーグレイの毛並で、すごく高貴で優美な猫なんだ。そいつが、俺が一番最初に拾ってきた・・・動物。
最初は泥だらけで汚い子猫で、身体を洗ってやって初めてそのキレイな色合いの毛並に気が付いて・・・すごく、驚いて、すごく、感動した。
毎日ちゃんと世話をして、すごく、なついてたのに・・・ある日突然居なくなって、帰って来なかった。
必死になって探したら、家の近くの路上で車に轢かれて、潰されて、ボロギレみたいになってて・・・
あれから・・・だなぁ、いろんな動物を拾うようになったのは。
怪我して、死に掛けてるのを見ると、どうにも放って置けなくて・・・でも、大半は助からなくて死んでった
だから
一番最初に、潤也を見かけた時、本気で、最初に拾ったあの猫が人間に生まれ変わって戻ってきたような・・・そんな気がした
でも今度は逃がしたくなかったから、猫じゃなくて犬が欲しかった。首輪をつけて飼える、俺だけの忠実な飼い犬が。
結局、そんな考え方自体が間違ってたんだけど・・・
あの頃はそれしか思いつかなくて、2年もの間、ずっと、毎日、遠くから潤也を見てて・・・そのせいであんな事になって・・・
だから
俺、今でも信じられない・・・潤也がここに居てくれる事が
俺、どうしようもない馬鹿で鈍感だから言葉にしてくれないと、分からない
潤也、俺・・・どうしたら良い・・・?」
そう言ったら、小さな、震える声で
「・・・いきなり・・なに・・・言って・・・」
そんな風に言って、頑なだった身体が柔らかくなった
俺は覆いかぶさっていた身体を浮かし、丸まっている潤也の布団を剥がしてその顔を上向けた
案の定
その瞳が、涙で潤んでいる
「・・・なんで、泣いてたの?」
「・・・涼介の・・せいだろ!」
「うん、分かってる。だから、何で泣いてたの?」
「ッ、分かってるんなら・・・!」
「だめ、ちゃんと言って」
「・・・っ、寂し・・かったから、だよ・・・!」
ムッとしたように、でも恥かしそうにそう言う潤也は、すごく、可愛い
「・・・ごめん」
そう言ってくれて、そう思ってくれてることが嬉しくて、言葉とは裏腹に顔が緩んでどうしようもない
「な・・んだよ?!そんな顔で謝られてたって・・・・っ!」
俺のその顔を見て、カァ・・・と朱に染まった顔を誤魔化すように潤也が言い募ろうとしたので、もうそれ以上言えないように、唇を強引に塞いだ
一瞬、抗うように逃げを打った舌先を包み込んで、吸い上げる
互いの粘膜が触れ合って、彼我の境がなくなるくらい体温を混ざり合わせると、一層、口づけが深くなって潤也が息苦しさを訴えて俺の胸を押し上げてくる
でも、そんな抵抗もほんの一時で
「・・・っ、ふ・・・・んっ」
その合間を縫って聞こえる潤也の濡れた甘い吐息と、互いの体液が立てる水音が、静かな室内に響き渡る
耳から聞こえるその音が体温を上げていく
ゆっくりと潤也の身体から力が抜け、その間にパジャマのボタンを外し胸を肌蹴て撫で回し、指先でその突起に触れた
まだ柔らかく、飾りとしてしか用のなかったその部分を、爪先で引っ掻き、潰して、育てていく
「は・・・ッ、痛・・・や・・・・ん・・・っ」
潤也の身体が刺激に敏感に反応して、ビクンと跳ねる
硬く立ち上がり、芯を持ったその尖りを爪先で軽く弾きながらようやく潤也の唇を解放し、糸を引いた粘液を舐め上げた
「・・・潤也」
刺激にギュッと目を閉じて耐えている潤也の顔を間近に見下ろしながら、その名を呼ぶ
するとゆっくりと閉じられていた瞳が開いて、俺を見上げてくる
この時の、この、欲情で潤んだ潤也の瞳ほど、ゾクリとさせられるものはない
泣いている時にも少し青みががって見える限りなく黒に近い青色が、そんな物など比にならないほどに、滲むようにその青さを誇示してくる
他のどこにもない
今、俺の腕の中だけに居る、まさにブルーグレイの瞳、シーツの上で乱れ散るブルーグレイの髪
2年前のあの出来事を思うと
本当に、こうして触れられることが、夢のようで
その体中、至るところに唇を這わせ、痛みを伴うほどの痕を刻み付けてしまう
「・・・んっ、や・・待って、りょ・・すけ、服・・・!」
上擦った声でそう言った純也が、俺の首筋に手を廻して身体を起こし、まだ脱いでいない俺の服を脱がしていく
行為の始めは、どちらかというと猫みたいに素直に俺に組み敷かれて身体を摺り寄せてくるのだけど
そのうち、猫からもともとの犬気質へと変わってくるようで
自分だけされるのは嫌だとばかりに、俺の上に跨って全身を舐めまわし、最後には潤也が俺自身を口に含んで離さないので、それだけでイってしまいそうになる
だから四つん這いさせた潤也に俺の顔を跨がせて、俺自身も潤也を口に含みながら、その後でひくつく秘部に指を差し入れて、潤也が行為に没頭できないように煽っていく
「ふっ・・・・・・、っ、・・・あ・・・っ」
後から与えられる刺激に耐えられなくなると、すっかり潤也の口が留守になり、背が弓なりになって腰が揺れてくる
「・・・潤也、こっち向いて・・・自分で挿れて」
「・・・ん、」
欲情でめいいっぱい潤んだ瞳で小さく頷き、体勢を入れ替える
俺の腰に跨って、自分の唾液で濡れ光る俺自身に、ゆっくりと腰を下ろしていく
俺の方から潤也の足を大きく割り、その内部へ入っていくのもいいけれど、こうして恍惚とした表情を浮かべた潤也が、狭い内部への入り口に俺を埋めていく様を見上げているのもまた、堪らなく良い
時々苦痛に眉根を寄せながら、ゆっくり、ジワジワと俺を体の中に埋め込んで、潤也が俺の顔を覗き込んでくる
「・・・・動いて・・良い・・・?」
そう言われて、顔を引き寄せ軽くキスして頷くと、潤也が俺の上で動き始める
与えられる刺激は緩やかで、物足らない
だけど、膝を付いて腰を振るせいで、狭い入り口が一層収縮しているのだろう・・・その締め付けがきつく感じるほどに良い
「ふ・・・ん、っ、・・・・・・んっ」
自分で刺激をコントロールしながら緩やかに律動していた潤也の腰を不意に持ち上げて突き上げた
「ひ・・・っ、あああっ!!」
一瞬背を弓なりにして仰け反ったその身体が落ちてくる前に、腹筋を活かして起き上がり、その胸元に噛り付く
「はっ、や・・・・ぁ・・・っ」
首筋に腕を回して俺の身体にすがりついた潤也の身体を抱え、深く繋がったままその背をシーツに押し付けた
「く・・・っ、」
背を落とす瞬間、本能的に落ちる事を嫌った潤也の身体が俺にしがみ付き、埋め込んだ俺をきつく締め付けて、思わず息を詰める
首筋に腕を廻したまま噛り付いていた潤也の唇を貪りながらその腕を引き剥がす
シーツにその両肩を押し付けて唇を離し、潤也の片足を肩に担ぎ上げて無理な姿勢で押し広げ、思う様、体の奥底を蹂躙する
「ああっ!ク・・・っ、ん・・っ、は、あ・・っ!」
今までとは違う角度からの突き上げに、潤也の顔が苦痛とも快感ともとれる表情で喘ぐ
俺の方も無理な体勢から来る締め付けが、突き上げるたび今までと違う部分を擦りあげてきて、夢中で腰を打ちつけた
「や・・・っ、りょ・・すけ、これ、やだ・・・っぁ・・・っ」
やはり、無理な姿勢は苦痛の方が大きいようで、俺は担ぎ上げていた潤也の脚を下ろして四つん這いにさせ、今度はゆっくりと焦らすように腰をグラインドさせながら背後から突き上げていく
片手を胸元へ伸ばして、その突起を弄んでやると、潤也の付いていた腕が折れて、シーツに顔を埋めて荒い息を付いた
「あ・・・・あ・・・・や、そ・・んな、涼介のイジワル・・・!」
「イジワル・・・?どうして?」
ゆっくりと、微妙に一番純也が感じるポイントをずらして、突き上げる
「あ・・・やっ、だ・・から、そ・・やって・・・・んっ」
涙目で見上げられて、さすがに良心が咎めて、背骨に沿って唇を這わしながら聞く
「じゃ・・・どうしてほしい・・・?」
「んっ、イかせ・・・て。りょう・・すけ・・・の顔、見ながら・・・っ」
「・・・わかった」
クルリと潤也の身体を返して上向かせ、これ以上ないほどに大きく割った脚の中へ、深く押し入った
「・・・・っ、く!は・・・っ、あぁ!!」
突き上げた瞬間、まるで引き絞られるように締め付けられて、一瞬、動きが止まる
「く・・ぅ・・・っ、すげ・・・・・っ」
軽く腰を揺らすと、ますます締め付けがきつくなって、潤也の腰が浮く
「あ・・・そ・・こ、やぁ・・・・っ!!」
涙目で背筋を仰け反らせた潤也にの唇を求めて伸び上がると、その動きに新たな刺激が生じたようで上がりそうになった喘ぎ声を塞ぐ
舌を吸い上げながら潤也の腰を引き寄せると、俺の背中に伸びた潤也の指先が、その快感の度合いを物語るように、爪を立ててくる
「ジュン・・潤也、しっかり・・捕まって・・・ろ・・・っ!」
「な・・・っ、あ・・・っりょう・・す・・・っ・・・」
すがり付いてきた腰を浮かして持ち上げ、今迄で一番深く、激しく突き上げる
「・・・・・っ!!!」
声にならない悲鳴が耳元で上がる
浮かした腰の位置を保とうとするかのように、純也の両足が俺の腰をはさんで締め付けてくる
「・・・・ッ、ジュン・・ヤ・・・ッ」
「リョ・・・スケ・・・ッ!!」
互いに名前を呼び合いながら、二人同時にシーツに沈む
ドクドク・・・と潤也の体の中で未だに絞り取られているかのように、放った体液が潤也の身体の奥底を満たしていく
「・・・・・・りょ・・・すけ・・・」
「ん・・・?」
「好き・・・大好き・・・」
ギュ・・と背中に回っていた潤也の手が、俺の身体を包み込んでくれる
もういっそ、このままずっと潤也と繋がったままでいたい・・・!とさえ思う
「俺も・・・・・・・・」
その先の言葉は潤也にしか聞こえないように、その耳元に密やかに注ぎ込む
ふ・・・と笑いあって、幸せの余韻を持て余しながら、俺達は眠りに落ちて行った
「・・・・あ、ぅ・・んっ、や・・・だめだって・・・っ」
耳元で聞こえた、艶っぽい声に、ハッと意識が覚醒した
それと同時に聞こえた・・・荒い動物の息遣い
ガバ・・ッと身体を起こすと、恐らくはそのバカ力で俺の身体を押しのけたんだろう・・・
シルバーグレイの艶やかな毛並が、俺と潤也の間に割って入っていた
まだ裸のままで、その上、数時間前に抱き合った残滓をまとったままの潤也の裸体を、まるでそれを舐め取ろうとしているかのように、ラッキーがペチャペチャ・・と淫猥な音を響かせて舐めていた・・・!
「こ・・の!クソ犬!!潤也から離れろ!!」
拳を振り上げてその横顔を殴りつけてやろうとしたら、絶妙なフットワークでその攻撃をかわされた
「っ!?涼介!?何?どうしたの!?ラッキーが何かした!?」
そんな俺の剣幕と、横っ飛びに俺の攻撃をかわし、反撃のタイミングを計っているラッキーに、潤也が戸惑ったような声を上げる
「何・・・って!このエロ犬、お前の身体を・・・!」
「嫌だな、涼介、それくらいスキンシップじゃない。犬にそんな事で怒ってどうするの?」
「ス、スキンシップだとぅ!?冗談!見てみろ!コイツのこの目!!」
そう言ってラッキーを指差したら、さっきまで勝ち誇ったように俺を見据えていたラッキーの視線が、一転して素直で従順・・・な飼い犬の眼差しに戻って、潤也を見つめている
・・・・・・・・こ、こいつ・・・!俺と潤也で態度を変えやがって!
「じゃ。俺。先にシャワー行って来るね!」
そう言った潤也が部屋を出て行くのに、ラッキーまでもが一緒に着いて行く
「あ、この・・!ラッキー!てめぇはここに居ろ!」
「もう、涼介、大人気ない!ラッキーはまだ子供なんだよ?」
そう言って、俺の苛立ちなどどこ吹く風・・・
笑いながら潤也がラッキーを連れて部屋を後にする
部屋を出際、俺をチラリ・・・とみたラッキーの視線・・・!
人間で言えば『ざまーみろ!』とでも言いたげな視線に、閉じられたドアに向かって、思い切り枕を投げ付けていた
「くそっ!今にみてろ、病気にでもなった時、診療するのは俺だぜ?エロ犬め・・・!」
叫んではみたものの・・・
身体と心、両方満たされた・・・こんな朝が得られるのも、まあ、ラッキーが一役かっていないわけでもない
共存、共栄・・・とはいうけれど
犬が居る生活も、そうそう捨てたもんじゃない・・
そんな風に思えた、朝だった
終わり
お気に召しましたら、パチッとお願い致します。