求める君の星の名は
ACT 43
<修学旅行2日目・午後・京都府警>
「っ、なぜですか!?」
声を荒げた高城が、京都府警本部長を前にして言い募っている
「なぜも何も・・・国際会議を通じて送られる救援医療物資だぞ?確かな証拠もないのに船の輸送を止めて、貨物コンテナの麻薬輸出捜査など・・・!何も出なかった時の責任をどうとる気かね!?」
「片桐と新井組が密接につながっている事ぐらい、ご存知でしょう!?
闇で出回っている偽造品の”エフ”の出所が新井組、会議を京都に誘致したのは片桐で、関西圏に進出するのに邪魔な葛西組を会議開催で強化された取締りで弱体化させてるのは明白!
そして今回の国際会議から、救援医療物資には片桐がほぼ独占で関わる事になった。表向きは企業ボランティアだが、これは明らかに偽造”エフ”の輸出ルート作りのためだ!コンテナを開けて調べればすぐに分かることです!どうしてそれが出来ないんですか!?」
「確かに、最近出回り始めた偽造”エフ”は国内でしか流通していない。だが、だからと言ってそれを片桐が作った物だという証拠はどこにもないだろう!コトはただの捜査じゃすまない、国際問題に発展するんだぞ!大体、そんな捜査事態、前例がない・・・!」
「密輸ではなく、輸出だから・・・ですか!?」
「そうだ!国内で作られた麻薬の輸出など・・・考えられん!」
「だからこそ、そこに盲点があるんじゃないですか。紛争地域や災害地への救援物資は税関でもほぼチェックフリーで素通りだ。国内で麻薬生産が行われない・・・なんて一体誰がそんな事を決め付けてるんです!?」
「それじゃあ聞くが、一体どこでそれだけ大量の錠剤型麻薬”エフ”が作られてるというんだね?証拠も何もない、ただの憶測に過ぎん・・・!」
「ええ、確かな証拠はないですよ。だからこそ、その証拠を掴む為にコンテナのチェックをするべきだと言ってるんです!少しでも疑わしいと思うなら、開けてみるべきでしょう!?動きもしないで証拠が見つけられるわけがない!」
超然と怯むことなく、美青年といわれる形容詞が最もよく似合うその美貌に似つかわしくない激しさで、高城が目の前にあった本部長用の楓で作られた重厚なデスクを叩きつける
その激しさのせいでより一層迫力を増した美貌と、その真剣な眼差しを一瞬見据えた本部長が、ツイ・・ッと視線を反らしもう話は終わりだ・・・!とばかりに高城に背を向けて立ち上がりながら言った
「確かな証拠がない以上、捜査令状は出せん。これでこの話は終わりだ」
「っ、わかり・・ました・・・!」
悔しげに唇を噛み締めた高城が、一瞬、机上に叩き付けた拳を硬く握りしめ、吹っ切ったようにその拳を離しきびすを返した瞬間
「・・・織田警視はまだ見つからないのかね?」
不意に、背中越しに問われた問いに、高城の足がピタ・・ッと止まる
「”エフ”絡みのあの事件からもう6年か・・・早いものだな。君がなぜ私の元へ来て、無駄だと分かっている話をしに来たか・・・全く、昔から君は無理難題ばかり言ってくる困った部下だな」
「桜木(さくらぎ)本部長・・・・!」
思わずその名を呼び、振り返った高城の気配に、桜木が窓の方へ顔を向け、高城には背中を向けたまま『それ以上言うな』と言わんばかりに一瞬、片手を上げる
「ここから先は定年間近の年寄りの独り言だ。明日の晩、同じ港から”シルバー・ネプチューン”が出港する。何が起こるか分からん昨今だ・・・その時の周辺警備を増強しておくつもりだ。そこで何か騒ぎが起こっても・・・一切、私の関知するところじゃない」
「あ・・・・・っ」
「・・・私も、織田が死んだとは思っていない。あれだけの男だ・・・何か事情が絡んでるんだろう。あきらめるな」
「は・・い、ありがとうございました・・・!」
深深と頭を下げた高城が、6年前より少し小さくなったその背中に敬礼を返し、本部長室を出て行った
バタン・・・と背後で閉まった扉の音に、桜木がハァ・・・ッと深いため息を吐く
科警研の高城と本庁の織田警視・・・ほんの短い間ではあったが、桜木は本庁時代に二人の上司だった事がある
思わず見惚れるほどの美貌の持ち主で、プロファイラーとしての資格を持つ高城は、科警研の所員でありながら捜査現場にも顔を出し、捜査権限のある刑事としての資格も併せ持っていた
その高城と、稀に見る切れ者でキャリア組の中でもトップを行く出世頭・・若くして警視にまでなった織田・・・
当時
この二人の絶妙なコンビぶりによる検挙率はダントツで、本庁はおろか合同捜査をした他県の県警にもその名が知れ渡っていた
そんな中、当時国際的に問題になっていた錠剤型麻薬”エフ”に、日本も国際協力の一環としてICPOと協力して、極秘に潜入捜査が行われた
そこに抜擢されたのが日本人離れした容貌と語学力・・・を買われた織田だったのだ
偶然、高城も同時期に科学捜査全般の技術向上と共同開発、次世代通信網の導入・・・のため、ICPOへ出向した
そして起こった・・・あの、麻薬製造現場摘発直前の爆発事故
製造現場に潜入捜査していた織田もまた、その爆発事故に巻き込まれ・・・以来、遺体が見つからず行方不明なままになっていた
元々期限のきられていないICPOでの任務だった高城は、織田が所属していた国際刑事科への転属も叶い、織田の後を引き継いでずっと”エフ”を追っているのだ
「・・・・”エフ”の根は深いぞ・・・高城。織田の二の舞にだけはなるなよ・・・!」
府警の建物から出て行く小さな人影を窓から追いながら、桜木が苦々しく呟いていた
「プップッ・・・!」
軽く鳴らされたクラクションの音に、高城が振り返る
「海斗!」
自分を下の名で親しげに呼ぶ男・・・秋月真哉に気付いた高城が、すぐ側に寄せられたその車に乗り込んだ
「・・・で、どうだった?桜木のおやじさん?」
「・・・協力は一切しない・・ただし、その場で何が起ころうと関知もしない・・・そうだ」
「微妙・・・だな。どうする?」
眉間にシワを寄せ、思案顔になった真哉を、高城が鼻で笑う
「フンッ・・・せっかくの桜木さんのご好意を無にする気はサラサラないさ。開けられないのなら強引に中味を曝してやるまでだ。警備でその場に居る警官達の前でな」
「強引に・・・!?海斗、お前なに考えてる!?」
「俺の事はいい・・それより、飛(フェイ)と一緒に居るもう一人の人物が誰なのか、まだ分からないのか?」
昨夜、ルームサービスを持って行った大吾と昴の報告を、高城はたまたま居合わせた真哉と供に聞いている
それを元に答えをはぐらかして問われた問いに、真哉がグ・・・ッと唇を引き結び、一瞬の間をおいて高城に問いかけた
「・・・海斗、お前・・・大吾君が見たって言う灰色の目の男・・・本気で織田だと思っているのか?」
「ッ、大吾君の記憶が確かなら、あの飛(フェイ)があの密輸事件に関わっていた可能性は高い。その飛(フェイ)と一緒なら、かなりの要注意人物だぞ?」
高城が、真哉に問われた問いを無視して自分の問いを重ねる
そんな高城に真哉が苛立ったように言い募った
「海斗・・・っ、いいか、聞け。俺はそのサングラス男と一度廊下ですれ違ったんだ。けど、俺に対して何の反応も示さなかった。あれが本当に織田だったら、あんな風に全く他人の振りなんてするか!?あれは織田なんかじゃない!別人だ!」
「・・・そいつが誰なのか、決めるのはお前じゃない、秋月。俺が自分の目で見て、確める。それだけだ。分かったら俺の質問に答えろ!」
まるで挑み合うように、真哉と高城の視線がぶつかる
先に視線を反らしたのは、真哉のほうだった
「・・・くそっ、中東の王族の血を引く金持ち・・・ってことぐらいだ。何者かまでは、まだ・・・」
「そうか・・・。じゃあ秋月、拉致られた子の方、海上保安庁にもお前に協力してくれるように手回ししてある、後は頼むぞ」
「は・・・?」
「ここからは別行動だ。これ以上お前を巻き込む分けないはいかない」
「海斗!?おい、ちょ・・・っ!」
ちょうど信号で止まった途端、高城が素早い動きで車から降り、携帯電話で誰かに電話しながら、降り向きもせずに雑踏にその背中を溶け込ませてしまう
思わずドアを開け、車を置いてその後を追いかけようとした真哉だったが、不意に変わった信号に周囲の車から真哉に向かって一斉にクラクションが鳴らされた
「あのバカッ!、今更、なにを・・・!」
忌々しげに車のドアを叩き閉めた真哉が、ギリ・・ッと唇を噛み締めていた
<同時刻・Rホテル・エグゼクティブツイン>
コンコン・・・・
ノックされた音に、昴がバタバタと駆け出して勢いよくそのドアを開けた
「やった!待ってました!お昼ごはん!!」
「・・っと、ビックリした、元気やなぁ、昴君」
苦笑いを浮べたコック服姿の大吾が、ルームサービス用のワゴンを室内に押し入れた
「麗!ほら、この人が大吾さん!昨夜食べたご飯も凄く美味しかったんだ!絶対、麗も気に入るって!」
ワゴンを引き入れるのを嬉々として手伝いながら、部屋の中でイヤホンを耳にかけたままパソコンに向かっている麗に昴が呼びかける
その声に、昨夜からずっと寝食を忘れて画面に没頭していた麗が振り返った
「へ・・え、こりゃ驚いた。昴君の言うとおりや・・高城さんより上手の美人!っと、すまん、挨拶が先やな。俺は川崎 大吾、貴也の友達で七星君のメル友、でもって昴君の昨夜からのお友達や、よろしゅう。で、君が・・・?」
「ええ、はじめまして。昴の兄の浅倉 麗です」
にこやかに笑った麗の美貌に惑わされる事もなく、真っ直ぐに大吾が麗を見据えた
見惚れるほどの笑顔の中で、麗のその青い瞳だけが笑っていない
バチ・・ッと視線が合った瞬間、互いに互いの技量を目踏みするかのような鋭い眼差しがかわされた
その麗の顔に似合わぬ油断のならない眼差しに、大吾の口元がニヤリ・・と上がる
「・・・・・おもろいなぁ・・・浅倉4兄弟やったっけ?なんやこう・・・背筋がゾクゾクしてきよる」
「・・・・・それはどうも。ですが、昴は俺の可愛い弟なんでね・・ヤバそうな事に勝手に首を突っ込ませないで頂きたい」
昨夜、タダ飯の礼・・とはいえ、大吾は手伝いと称してイスハーク達の居る部屋に昴を行かせたのだ・・昴が七星の弟だと知らなかったとはいえ、普通、ありえない行為だ
そんなありえない手伝いをさせた・・ということは、大吾側に何かそうしておいた方が無難・・・だという事情があったから、と考えるのが妥当
実際、大吾はスィートルームの客が自分の顔を覚えている可能性を考えて、昴に手伝わせたのだ
中に居る人間と顔をあわせることなく、その声だけを確認するために・・・
ただでさえ、七星が巻き込まれ、流までもが巻き込まれているのだ・・この上昴まで何かあったら・・・!そんな思いで、自然と麗の表情と口調が厳しくなる
「あー・・・、知らんかったとはいえ、それはホンマに申し訳なかった思うてる。せやからこの飯は俺からのおごりや。腕によりをかけて作ってきたから、食べてな!」
不愉快さを隠そうともしない麗の態度を微塵も気にする風でもなく、大吾が一転、屈託のない笑顔になって陽気に言い放つ
「もー!麗!全然危なくなんてなかったんだし!いいじゃん!それよか食べようぜ!・・って!うわぁ!リクエストどおりほんとに和食だ!」
ドーム状の銀食器が開かれると、中にはご飯に味噌汁、出汁巻き卵に煮物、焼き肴・・・といった純和食が湯気をたてて鎮座していた
朝食にバイキングに行った昴は、そこで給仕をしていた大吾を捕まえ、徹夜でなにやらやっている麗用に、和食のルームサービスを頼んでおいたのだ
昴に促され一口それを口にした麗が、その味の確かさに密かに目を見張る
大吾の派手で軽い雰囲気の裏に隠された、料理に対する真摯さを感じさせるに十分な味、盛り付け・・に、麗の表情から不愉快さが消えていく
料理で懐柔・・・されたわけではないが、一見軽そうな容貌と態度とは違う、本物を見極める目を持った人・・・という七星が感じた物と同じ物を麗も得たようだ
黙々・・と箸を進める麗と、嬉々としてにぎやかに食べる昴の様子を、大吾が満足そうな笑みを浮かべつつ、麗に問いかけた
「・・・あれ?そういえば・・あの秋月とかいう人は?居らんようやけど・・・?」
「・・・ああ、高城刑事を京都府警まで送っていく・・・とかで出て行きましたよ」
「京都府警!?そういえば、なんや・・昨夜昴君にスィートルームに居った人間の顔、パソコン画面で確認させてから顔つきが変わとったな」
「・・・ええ、なんでも昴が見た人物が、裏で中国マフィヤを牛耳ってるとか言われている皇(コウ)財閥総帥の皇・飛(コウ・フェイ)とかいう人物だったらしくて。その飛(フェイ)が来ているという事は、まず間違いなく偽造”エフ”が外に持ち出されるルートが動くだろう・・・と、秋月さんが出かけにそう言ってました」
「・・・ふ・・うん。なるほどな。日本ではまだ麻薬製造、国外輸出・・なんやいう組織だったもんは前例がない・・・。前例がないっちゅうことは、警察も動かへん。・・ったく!またあの人は、一人でなんややらかす気ぃやな」
呟くように独りごちた大吾の表情が、あきれたような雰囲気を漂わせながら・・高城の事を本気で心配している色合いを滲ませている
若い頃、散々警察に世話になった経緯がある大吾だけに、警察の内部構造や内情もなんとなく察する事が出来るようだ
・・・・・・・・ふうん、なるほど。根はお人好し・・ってことか
その大吾の表情を観察した麗が、素早くその性格と扱い方に頭を巡らせる
「えー、でも、俺が見た人の確認した時より、大吾さんが見たって言うサングラス男の灰色の目・・の方が高城さん驚いてなかった?表面上はほとんど顔つき変えなかったけどさ」
即席に漬けたにしてはいい味に仕上がっている浅漬けで、〆のご飯をかき込みながら昴が呑気に言い募る
その言葉に、へえ?と言わんばかりに大吾が目を見張った
「なんや、お前、見てないようでしっかり見てるやん?確かに、動揺してたぜ、かなり・・な。高城さんは無茶はするけどそれなりに手回しもする人なんや。けど、昨夜からの急な行動見てると・・やっぱ、あの灰色の目の男の事が原因やないか・・いう気がしてしゃぁない。
ひょっとしたらそいつが行方不明やいう、高城さんの相棒なんかもしれん。あの人、ずっとその相棒を探してるからなぁ・・」
「そういえば、秋月さんもその時一緒に高城さんの部屋に居たんでしょう?昴を連れて帰って来てから一人でなんだか不機嫌そうに飲んでたから、声が掛けづらくて。
ソファーで寝ちゃったから毛布かけに行ったら、寝言で『・・・あいつは織田じゃない』とか言ってましたから」
「織田!?そうや、確かそんな名前やった!高城さんの探してる相棒!」
ハッとした様に言った途端、大吾の携帯がポケットの中で鳴り響いた
っ!?と、携帯を取り出した大吾の表情が一瞬、曇りはしたが、溜め息交じりで通話ボタンを押した
「・・・・・俺やけど?なんや?高城さん?」
そう言ってから、大吾の『・・・ハァ!?』『そ、そりゃ、居るには居てるけど・・』『おま・・、なに言って!?』『んな、無茶な!』・・・という一方的に言い募られている事が窺える会話の後、唐突に
『って、おいっ!?』という言葉と大吾の茫然とした表情を残して、電話は切られてしまったようだった
「・・・・なに?どしたの?大吾さん?今の、あのキレイな刑事さんでしょ?」
食事の最後のお茶を飲み干した昴が、怪訝そうに問いかける
おもむろにコック帽とソムリエエプロンを脱ぎ捨ててワゴンの取っ手に投げつけた大吾が、ガリガリ・・と派手な金髪をかきつつ、きびすを返しながら言った
「悪い、それ喰い終わったら廊下に出しといてんか?他の者が取りに来るよって。俺、これから昔馴染みと会うてこなあかんようになったから」
「・・・昔馴染み?」
上目遣いに訝しげな目つきで問いかけた麗に、大吾がニヤリ・・と笑み返す
「ああ、この辺じゃ有名な族の総長やった奴。辞めた今でも相談役で若い奴らに慕われてる。・・・調べてるんやろ?それくらい?」
「・・・関西一の勢力を誇る暴走族、神風連合の”ブラックエンペラー”?」
「・・・ええねぇ。顔でも張ってるけど、どうやら麗君も高城さんと同じ人種みたいやな。多分、こっちはこっちで大騒ぎになる。そっちの拉致られた弟君の方まで手が廻らんかも知れへんで?」
「ええ。分かってますよ、それくらい。ご心配なく・・・」
不敵な笑みを返した麗に、大吾が『これやから美人は油断ならん!』と、肩をそびやかしつつドアを出て行った
「・・・麗?ご心配なく・・・って、流、本当に大丈夫なの!?警察の手が廻らないんじゃ・・・!」
「大丈夫・・・。聞こえてくるイスハーク達の会話から推察するに、流は生きてないと意味がない、”餌”みたいだし、まだスィートルームの中だし」
まるで麗の好みを知っていたかのように、大吾によって淹れられていたコーヒーをカップに注ぎながら、麗がずっとかけっ放しのイヤホンの雑音調整をする
「”餌”!?なに?それ?」
「・・・・”ダブルクリムゾンスター”・・・」
「へ!?」
「どちらが本物の”赤い星”になりうる物なのか・・・か、とりあえず、今はその”赤い星”の片割れを信じるしかないな。俺達にできることはその後のフォローくらいだよ」
「だ−−−っ!もう!言ってる意味、ぜんっぜん、わかんない!」
膨れっ面になった昴の頭を、麗がまぁまぁ・・とあやす様にポンポン・・と撫でつけた
「俺にだって正直、まだあいつらが何をしようとしているのか分かってない。でも、流に関しては多分、何とかなる・・・そんな気がしてる。だけど、問題は七星のほう・・・」
「七星・・・?」
「そう・・・舵先生と七星、そしてキョウ、野上真一。こっちの方が心配なんだ。なにしろキョウって言うのが一体何者なのか全然正体が掴めないし、野上真一の裏の顔もさっぱり・・なんでね」
「あ・・・そうか。七星、大丈夫・・かな?」
「まあ、七星自身がヤバい事に首を突っ込まない限りは、何とかなると思うよ。
何しろ七星は華山グループの後継者なんだよ?あの美月さんが監視も何も付けずに七星を放置してるはずがない」
「え?監視!?」
「監視って言うより、ボディーガードってとこ?桜ヶ丘学園自体、美月さんの管理下にあるんだから。それに、七星の携帯にはGPS付いてるから俺達も七星の居場所は確認できるしね」
「そうだね。七星がイスハーク達の居る港に来るはずもないし!」
「・・・だと、いいんだけど・・・ね」
駆け抜けた一抹の悪い予感に、麗が眉間にシワを刻みながら呟いていた