求める君の星の名は
ACT 74 (18禁)
<カノープス・舵貴也>
「…抱いて良い?」
どうしてそんな言葉が今更こぼれでたのか?自分でもよく分からなかった
多分、七星に押し倒されて感じた焦りと、『もう子供なんかじゃない』と言った七星に対する、子供でも生徒でもなく一人の大人の男として、男である俺に抱かれて良いのか?そんな意味合いを含んだ問い
一番最初に七星を抱いた時と同じ気持ちで
けれど
明らかに成長し、庇護される子供ではなくなった、一人の男に対して
一瞬、何で今更?と言わんばかりに俺を見つめ返してきた七星が、俺の言葉に含まれた意味合いを何となく感じ取ったように、凄く真剣な眼差しで頷き返し、言葉を続けた
「…他の奴は、抱くな」
ほんの少し震えた声で、不安げにまつ毛を伏せて、囁くように言い放たれた命令形
その、初めて聞いた七星のあからさまな独占欲に、思わず目を見張った
「…抱かないで…ほしい…」
消え入るような声で続けられた、命令から願望へのトーンダウン
うなじに回されていた手にギュッと力がこもり、俺の顔を胸元に抱きこんで、そんな風に言う
愛されていると思う
ひょっとしたら、俺以上に…
お互い痛いくらいにそれを感じているはずなのに、上手く言葉にする事が出来ないのがもどかしい
七星だけだと、何に誓えば良い?
どうすれば七星だけだと、信じてもらえる?
「七星」
求めているのは七星だけだと…ありったけの気持ちを込めてその名を呼ぶ
「七星…」
その名を呼びながら抱き込まれていた顔を上げ、もう一度深く唇を合わせる
「…欲しいのは七星だけだから」
息継ぎの間に、足らなかった言葉を継ぎ足す
「…俺以外の奴に抱かれたら許さない」
この身体も、心も、声も、眼差しも
全部俺だけのものだから
声には出さない想いも、キスの合い間に交わす視線で訴える
名残を惜しみながらようやく唇を離すと同時に、七星が『は…っぁ…ッ』と荒い呼吸を繰り返し、切ない吐息を洩らしながらも、どこか満足げに薄い笑みをその口元に浮べる
「だ…れが、他の奴、なんか…、抱かれる…か…っ!」
さっきのどこか不安気だった雰囲気から一転した、強気の口調
七星らしい…と、こっちも自然に笑みが浮かんだ
<ポーラスター・浅倉七星>
浮かんだ憎らしいほど余裕のある笑みに少しムッとしながらも、それでもその笑みに見惚れてしまう自分がいる
愛していると思う
愛されていると思う
それを言葉で伝えることは、すごく難しい
それでも、その気持ちを言葉に出して言ってもらえると、すごくホッとする
舵もそうなのだろうか?と想いのままの言葉を口にしてみたけれど、目を見張って驚いたその顔に、あまりに束縛の強いその意味あいに…思わず不安になって、そうであって欲しい…とトーンダウンした
だけど
『七星』と、名前を呼んだ舵の声に、それ以上の束縛を感じてドキリとした
やっぱり、舵のこの声で、名前で、呼ばれるのが一番ドキドキして、一番好きだ
家族が呼ぶ響きとは全然違う、自分だけの物だと宣言しているような響き
だから”許さない”と言った言葉が嬉しくて思わず口元が緩んだ
同時に他の奴に抱かれるような軽い奴だと思ってるのか!?と、ちょっとムッとしたりもしたけれど
他の誰にも奪われたくない
ずっと側にいて欲しい
その気持ちを自覚し始めてから、日に日にその気持ちが強くなる
その想いの強さが、自分で怖くなる
時々、どうして良いか分からなくなる
腰を抱いていた舵の手が上に向かって伸びてきて、その大きくて温かな手で顔を包み込んでくる
頬を撫でたその指先が、耳たぶを弄びながらうなじへ…そして髪を梳く様に撫で付ける
同時にさっき見惚れるほどの笑みを浮べていた唇が、ゆっくりと首筋へと降りていった
ゾクゾクする
すごく気持ち良い
違う奴だったら、きっと鳥肌モノで身がすくむ
こんな風に気持ち良い…と思えるのは舵だから
ああ、違う…
貴也だから。
ずっと呼んでみたかった、下の名前
はじめてそれを言葉にして言った時、心臓が破裂するかと思うほどドキドキした
とてもじゃないけど、面と向かって…なんて言えないから、あんな風に言ってしまったけれど
呼んで?と言われると、なんだか身構えてしまって、口から出ない
もっと自然に…普通に、笑いながら言えたら良いと思う
求めているのは貴也だけだと…それが伝わるように
一つ一つ、シャツのボタンが外されて、失っていく身を包む物の代わりに、舵の温もりが身体を包み込んでいく
脱がされて絡んだ邪魔なシャツを腕から払い落として、その腕で胸元に顔を埋めた舵の頭をかき抱く
色素の薄い栗色の髪を撫で付けて顔を寄せ、その柔かな髪に口づける
驚くほど自然に、身体が勝手にその温もりを求めてそうしている
貴也だから。
他の誰にもそんな事したいだなんて思わない
胸を這い廻っていた貴也の唇がその動きを止め、さっきケーキの残骸を舐め取ったように、ざらついた熱い舌が胸の小さな突起を舐めあげ、尖らせた舌先で突く
「ッ、…ぁんっ」
洩れた声の甘さに、自分で息を呑んだ
たったそれだけの刺激で腰が揺れ、ピクンと小さく下半身が跳ねる
その反応は貴也にも伝わったらしく、背中に回されていた片方の手の指先が、明確な意志を持って背筋を伝い降り、もう片方の手がカチャカチャ…と聞いただけで赤面する音を立ててベルトを外し始めた
脚を跨ぐようにして膝立ちしているせいで、ベルトが外されくつろげられてもずり落ちることのないズボンをそのままに、背中にあった舵の指先が背筋を伝って降りた先…尻エクボの窪みに忍び込み、そこをゆっくりと円を描く様に撫で付け始める
「…ぁ、…あっ、ん、んっ」
ゾクゾクと痺れにも似た電気が、撫で付けられるその場所から背筋を這い上がってくる
「や…っあ、ぁ…っんっ…!」
胸の突起も片方を舌で弄ばれ、もう片方もベルトを外した指先に摘みあげられて…上と下、両方から与えられる刺激に、その気持ち良さに、押さえられない声が絶え間なく洩れて掴んだ貴也の肩に爪を立てた
「…っつ、七星、こっちも脱がせて?」
余裕のない、熱い吐息と共に注がれた声に命じられるまま掴んでいた肩から手を離し、貴也の身体に残る邪魔な衣服を脱がしていった
<カノープス・舵貴也>
互いに残っていた邪魔な衣服を取り去って、七星の身体を本格的に組み敷いた
覆い被さるようにして見下ろしたその表情は、火照った身体の熱で上気し、瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいる
何度見ても見飽きる事がない
とてもきれいだと想う
指に吸い付くほどに瑞々しい、シミ一つない滑らかな肌
シーツに散らばる漆黒の髪も艶やかで、指先に絡むことなくサラサラとすり抜けていく
最後に抱いた時、全身にくまなく付けた筈のキスマークはどこにも残っていなかった
あの時は確か3週間ほどの間が空いて、その後も禁欲生活が続くと分かっていたから、衝動的に歯止めなく抱いてしまった気がする
なのにどうだろう?
あれからもう2ヶ月近くも禁欲生活だというのに、あの時のような衝動が微塵もない
すごく、心が近い
すごく、満ち足りている
お互いの足らないところに、足らないものが満たされた感じ
それを、ただ確めたい…そんな穏やかな欲望
髪を撫で、額からキスを落として瞼、鼻先、頬…そして唇に触れるだけの軽いキス
「ん…っ」
七星の少し鼻にかかった甘い声…それだけで腰に甘い疼きが走る
俺しか聞けないその声を聞くだけでゾクゾクする
見上げてくる、欲情に濡れてとんでもなく妖艶に輝くその瞳も
触れただけのキスを追いかけて、七星からもう一度軽く唇を合わせてくる
その仕草も、細まった瞳も、とても穏やかで、すごく幸せな気分になれる
首筋を辿って鎖骨に触れ、胸の尖った突起を口に含む
途端にビクッと七星の身体が跳ねて、腰がうねる
密着した下半身の間で、お互いに熱を持って勃ち上がった中心がその腰のうねりのせいで微かに触れ合い、先端がジワリ…と湿り気を帯びる
跳ねた身体を優しく押さえつけ、口に含んだ突起を甘噛みして舌先で押し潰す
「っあぁっ!…ぁっ…っ」
一瞬高く上がった嬌声に、慌てて七星が口元に腕を当てて噛み、声を押さえ込んでしまう
「…食べるなら、俺にして?」
そう言って腕を外させ、その口に自分の指を入れた
一瞬驚いたように縮こまった七星の舌が、入れ込んだ指の腹でザラリ…と粘膜を刺激するとそのせいで溢れた唾液を舐め取る様に指先に絡んでくる
その指をそのままにもう片方の手と口で、芯を持って固く尖った胸の突起を摘んでは軽く引っ掻き、吸い上げては甘噛みした
「…ぅっ…んっ、ん…っ」
口に入れられた指のせいで嬌声はくぐもった声になり、気持ち良さと苦しさがない交ぜの表情になった七星の口の端からは、トロトロ…と唾液が洩れ落ちていく
もどかしげにうねる腰が更に互いの中心を触れ合わせ、ヌルリ…とした湿り気に変わっていく
唾液で濡れた指を七星の口から引き抜くと、それを七星の下肢へ…しばらくのブランクで固く閉じられた最奥の場所に擦りつけた
<ポーラスター・浅倉七星>
「あ…ッ」
思わずビクンと身体が跳ねた
久しぶりに感じたその場所への違和感に、眉間にシワが寄る
だけど
同時にそこから後でもたらされる快楽を知った身体にゾクリ…と震えが走り、一瞬冷えた身体に一気に火照りが甦ってくる
「…やっぱり、きついね」
穏やかな笑みでそんな言葉を囁いた貴也の顔が下に降りていき、脚を割って身体を入れ込むと、拒否する間もなく、俺のモノを咥え込んだ
「ハ…ッ!?ちょ…ま…っあぁぁっ」
咥え込まれた刺激だけでなく、同時にその下で中に入る入り口を探して蠢いていた指が、唾液のすべりも手伝ってズル…っと入り込む感覚
内壁をゆっくりと擦り上げるのに合わせて、咥え込んだ口も上下運動を始めた
「あ、あ、あ…っく…ぅん…っ」
その動きに合わせて絶え間なく声が洩れる
すぐに濡れた水音がぴちゃぴちゃ…と響いて、耳から音で刺激される
貴也の舌が筋を辿り、先端の割れ目をグリグリと刺激する
「くっ、ん…ぁ…っ」
そんな風にされると滲むトロリとした先走りの体液が、止めようもなく溢れてくる
屹立の筋を辿って流れ落ちた溢れた体液と、貴也の唾液の交じり合った物が下に向かって流れ落ちていくのが伝わってくる
それが更に身体の中を弄る指の動きを滑らかにしていく
その先を知った身体が、苦もなく増やされる指を呑み込んでいく
やばい…
気持ちよすぎて持ちそうにない
必死で押さえようとするのに、身体は勝手にビクビクと陸に上げられた魚の様に跳ねる
その身体を叱咤して、俺は何とか手を伸ばして脚の間に埋められた栗色の髪を引いた
「ちょ…っ、ま…って、やばい…って!」
「つ…っ?」
怪訝そうな顔つきで行為を中断された貴也が顔を上げる
その口元は唾液と粘液で濡れ光っていて、栗色の瞳も欲情の輝きで濡れ光っている
心臓が別の意味で大きく跳ねる
こんな顔…してたんだ
すごく艶めかしくて、一層、他の誰にもこんな顔を見せて欲しくない…と思ってしまう
「…俺も、したい」
「え?」
「だ…から、俺も、あんたの…っ!」
言ってる途中で体内にあった指がズル…っと引き抜かれて全身にブルッと震えが走る
抜かれて擦れる刺激にイキそうになって、息を詰めてその波をやり過ごす
「…したい、って、俺のを…?」
すごく驚いた顔つきで聞かれて、はっきりと頷き返した
「いや…でも…」
戸惑ったように言うので、拒否されるのはフェアじゃない…!と不意をついて天を向いて張り詰めているそれを手で握りこんだ
<カノープス・舵貴也>
「うわっ?!ちょ…っ」
思わず叫んで七星の行為を止めようとしたけど、ギュッと手で張り詰めていたモノを握りこまれて動きが止まり、息を呑む
「…あ…ついし、大きい…」
そんな言葉と共にゴクリ…と生唾を飲む気配
同時に形を確めるようにユルユル…と扱かれて、『…っん、』と鼻にかかった声が洩れた
慌てて深呼吸してその刺激をやり過ごす
七星が俺のをフェラしたいと言い出すなんて、正直言って驚いた
して欲しくない…ってわけじゃなかったけど、なんとなく、それは七星が嫌がるだろう…と思っていたし、想像するのも躊躇われた
それが、今、目の前でゆっくりと…漆黒の髪が俺の脚の間に埋まっていく
どうしよう…そう思って迷っていたのは確かだったけど、七星の柔らかくて弾力のある唇に先端を含まれ、熱くて乾いた先端を唾液で潤すように何度か出し入れされると、たったそれだけでドクッと血流が増し…その気持ちよさに身を任せてしまう
初めてだけにやり方が分からないはずなのに、俺のやり方を真似るようにして、オズオズ…と舌で茎を舐め、たどたどしい動きながらもゆっくりと口を上下させる
「…っく…ぅ…っ」
抑え切れない吐息が漏れる
さすがに普段から何でも呑み込みが早いだけある…ドクドクと脈打つ俺の反応から、どこが気持ち良い場所で、どう舌を使えば良いか…正確に把握してくる
加速度的に熱が上がっていく
いつもはどこか自分を律して凛としている七星のあの口が、俺の物を咥え込んで唾液で濡れ、舌を伸ばして舐め上げている…なんて
そう考えるだけで、本気でイってしまいそうだ
これ、ちょっと…ヤバイかも
普通にしている時も口元みただけで、感触が…
そう思った途端、耐え切れなくて力任せに七星の肩を掴んで引き剥がしていた
「ん…!?な…に…?」
いきなり引き剥がされた七星が、ムッとしたように…けれどどこか不安げに俺を見返してくる
その、唾液で濡れ光った口元と羞恥なんだろう…目元の赤さと、欲情で潤んだ瞳
ますますヤバイ
それは…ちょっと…かなり、クる
「…っ、も…いい、から」
「…なんで?下手…だった?」
「違う、その逆、気持ちよすぎて…!」
「だったら…!」
続きをしようと身じろいだ七星の身体をギュッと抱き寄せ、その耳元に囁いた
「…これ以上されるとヤバイ。イクなら、七星の中がいい…」
「なんだよ、いつもは俺ばっかり先にイカすくせに…」
不満げにそう言われて、ふと思いついた事を口にした
「…じゃあ、七星から入れて?」
「え…?」
なにそれ?と言わんばかりに七星が目を瞬いた
<ポーラスター・浅倉七星>
「…ゆっくり、そう…腰を落として…」
言われるままに仰向けになった貴也の腰を向かい合う形で跨いで膝立ちになり、その身体の中心でさっきまで俺の口の中にあった唾液で濡れ光る固く反り返ったモノに手をかけ、それを受け入れるための自分の場所にあてがった
「っ…、こ…んなの、いつも…入って…?」
「…いまさら」
笑って言われて、確かにそうだけど…と、ちょっと途方にくれた
上に跨って自分でそれを入れて…と言われて、いつも入れられているのを自分でするだけ…だと高をくくってた
けど、これ…!
フェラする時もこれが身体の中に入るのか?と、その改めて間近に見る大きさにちょっとビックリしたけれど、自分で入れるとなると、なおさら受け入れる場所の狭さが信じられなかった
さっき解されているせいで、熱い楔の先端は何とか呑み込めた…けど
「…くっ、む…り…っ」
「…力抜いて」
「そ…んな…の…っ」
「大丈夫、出来るよ…」
そう言って身を起こした貴也が俺の腰を抱き、目の前にあった胸の突起を口に含んで舌先で転がし、片手で萎えかけた俺のモノを扱く
その上、腰に廻した手は背骨から尻の割れ目あたりを撫で下ろしていく
「あ…、ん…っ、んっ…ぁ!?」
その刺激に一気に身体の硬さが和らぐ
じわ…と入り口が緩んで中に楔が侵入してくる感触がダイレクトに伝わってきた
「は…ぁ…っ、入って…く…っ!」
「…ん、七星、上手いよ…その調子…」
胸の尖りを含んだ口が挟み込むように柔らかく食んだかと思うと、不意に歯を立てて甘噛みし、突き抜けた痛みを癒すように舌で焦らすように撫でまわす
その刺激でゾクゾクする腰の疼きを下に向かって誘導するように、背筋や脇腹を巧みな指先が撫で下ろしていく
更にその刺激で固く勃ち上がったモノを握りこんだ指先が、緩やかに擦リ上げる
さすが、教師だけあってその誘導は巧みだと思う
ぬぷぬぷ…と侵入してくる楔の形状や脈動まで認識できるほどゆっくりと、それは俺の体内に埋め込まれ、その埋まった奥深さに息が上がる
「は…いった、けど…っ」
乱れた息で上手く喋れない
これ以上動けない
まさに串刺しにされた感じ
限界まで押し広げられた内側の粘膜の、今にも裂けるんじゃないかと思うほどの苦しさと、むず痒いような痛み
辛い…と思う反面、空き間もなくみっちりと繋がって一つになれたことに、ホッとする
今だけは他の誰のものでもなく、自分だけのものだと、確信できる
おもわず目の前にあった肩を掴んで、他の誰にも奪われないように縋りつく
「…七星」
耳元でその名を呼ばれ、荒い呼吸を繰り返す唇に落とされた、触れるだけのキス
「…七星、愛してる」
そんな言葉を囁きながら、顔中に幾つも啄ばむようなキス…
くすぐったくて、柔らかで、苦しさに上がった息が落ち着いてくる
埋め込んだ楔が身体に馴染んで、どっちの熱さか区別がつかなくなる
「…っ、も…だいじょう…ぶ」
首筋に腕を廻し、その耳元に囁きかける
その言葉に応える様に、ゆっくりと体内に埋め込んだ楔が浅く引かれ、突き返される
「はっ、あっ、…っ」
一瞬、息が止まる
だけど続いて浅く小刻みに体を揺すられると、ジンとクる疼きが奥のほうから広がっていく
「あ…、ん…っ」
揺すられていただけの動きから、下から突き上げる動きに変わる
「はっ、あっ、あ…っ…っ」
突き上げられて落ちるたび、今までにないほど深い場所に楔が打ち込まれて、新たな悦楽の場所を教えていく
その気持ちよさに思わず背を仰け反らせると、さっきとは違う場所を深く抉られて、その強い快楽に頭の中が真っ白になる
「…っく、…っや、…かや、貴也…っ」
無意識に、でも上がった息に途切れ途切れに、その名が口から流れ出た途端、身体の中の貴也がドクンッと脈打ち不意に動きを止めた
<カノープス・舵貴也>
「ふ…い打ち…!」
思わず呻いてその動きを止めた
その、たった一言呼ばれた名前
不覚にもたったその一言で、イキそうになった
「…あ…?」
どうしたのか?と、不意に動きを止めた俺の様子に、七星が顔を覗き込もうとする
「くっ、ちょ…動くと…っ」
慌てて七星の腰に手を当てて固定し、それ以上動けないように押さえ込む
深呼吸して、その大きな波を何とかやり過ごす
「え…?まさか…名前、呼んだから…?」
「…悪い?」
信じられない…というように聞いてくる七星に、ムッとしたように言い放ち、その背を抱いてベッドに押し付け、繋がったまま体勢を入れ替えた
「…うそ…、ク…クッ」
「あ、この、笑うか?」
押し殺したような笑い声を洩らされ、失礼な!と、波を乗り切って落ち着きを取り戻したモノで、七星の内部を探るようにゆっくりとこね回す
途端に笑みを象っていた口元が息を呑み、引き結ばれる
「…ク…、んっ、ちょ…、」
「笑った罰、もう一回呼んで?七星…」
「っ…、」
確実に感じるだろうポイントを攻めているのに、その快楽を耐えるように唇を噛み、俺を恨めしそうに見上げてくる
さっきは呼んだくせに、面と向かって…となるとやはり気恥ずかしいのか、その口は貝の様に固くなってしまう
少し意地になって、焦らすようにゆっくりとそこを突き上げた
「っ、…ぁ…っ、」
「…呼んで?」
「…ぅ、…っ、」
加えられる刺激に瞳を潤ませつつも、必死になって声を耐えようとする
分かってはいたけど、やっぱり照れ屋で意地っ張りだなぁ…とあきらめの溜め息が洩れた
反面、そういうところもまた可愛くてしょうがない…んだけど
吐息を押し殺しているその口元に軽くキスを落として、『ゴメン、俺の負け』と言いつつ、最後に駄目押しで言ってみる
「呼んでくれないと、イケそうにないって言っても、ダメ…?」
苦笑しながらそう言うと、さっきの俺の切羽詰った様子を思い出したように、ク…ッと再び七星が笑って肩を揺らす
どこか気負いの抜け落ちた、柔かな笑み
この笑顔が見られたら、名前なんて、もうどうでもいいか…なんて思ってしまう
「…俺も、笑ってゴメン」
その笑みを浮べたままそう言って、俺のほうへ七星が腕を伸ばしてくる
その誘いに顔を寄せると、首筋に柔らかくその腕が巻きついてきて、真っ直ぐに俺の目を覗き込んできた
「…貴也」
視線を合わせ、微笑みを浮かべたままの艶めいた表情で、不意に告げられたその名前、その甘い響き…!
…この、小悪魔…っ!
まさに瞬殺
息を呑み、一気に心拍数が跳ね上がった
同時に、七星の中に居る俺自身もドクンッと脈打って、ダイレクトにその嬉しさを七星に伝える
「あっ、ん…っ、すご…、ククク…ッ」
その反応に息を詰めながらも、更にこぼれた笑い
その弛緩した不意をついて、入れ替えた体勢のせいで挿入が浅くなったモノをグ…ッと突き入れた
「っん…っ!」
「笑っていられるのも今のうち…!」
宣言して、遠慮なく腰を打ちつける
「ふ…んっ、あ、あ、あぁ…っ」
首筋に巻きついていた七星の腕に力がこもり、肩に、背に爪先が食い込んでくる
その腕を引き剥がしてシーツの上に押し付け、指先を絡めて、覆い被さるようにして腰を進める
「んっ、あ、…んっ、そ…こ…っ」
絡めた指先を痛いほど握り返しながら、七星が今までになく素直に俺を受け入れ、なおかつ自分から快楽を追い、求めてくる
絡めていた手を解き、ビクビクと反り返っていた足を更に高く掲げ上げると七星の腰が僅かに浮き、不安定な体勢になる
その体勢に耐えようと七星の背が反り返り、そのせいで更に密着度が増した腰を、容赦なく打ち付けた
「…んっ…く、…っかや、た…かや…っ!」
その強い刺激に助けを求めるように、七星が俺の名前を呼ぶ
突き上げるたび、上げる嬌声の代わりにその名を繰り返す
羞恥も何もかも忘れ去って繰り返し呼ばれるその名前に、求めているのは俺だけだと…そう感じてこれ以上ないほどの幸福感に包まれる
もっと欲しがって
もっと求めて
俺だけのものになって
どれほど身勝手でガキっぽいのかと、そう思いながらも、その想いを留める事ができなくて、七星の身体にそれをぶつける
なのに、その身体はその想いを柔らかく受け入れて締め付け、それでも足らないとばかりに更に奥へと引き摺り込もうとさえする
「た…かや…っ!」
一際高い切羽詰った声と共に七星の身体が小さく痙攣し、白濁を散らす
同時に俺を収めた内壁が、引き絞るように締め付けてくる
その刺激に、限界まで登りつめていた俺も一際深く七星の奥を穿って動きを止め、白濁を注ぐ
ドクドクと何度も脈打ちながら、七星の一番深い場所でゆっくりと果てていく
「…なな…せ、」
整わない呼吸のせいで早鐘のように脈打つ心臓を、お互いしっとりと汗ばんだ胸の上で重ね合わせる
二重奏のように追いかけ合う鼓動がいっそ一つになれば良いのに…と、その身体を抱きしめた
「…ん、たか…や、」
まだ荒い呼吸のままに、七星が俺の名前を呼ぶ
伸びてきた腕が、俺の背を柔らかく抱きしめる
しばらくそうして互いの鼓動が治まり、汗ばんだ身体から汗が引いていく感覚を味わった
分け合って
満たされて
その存在の愛しさを、身体で知る
<ポーラスター・浅倉七星>
カチャン…
ジュゥ…
聞き慣れない音に意識がゆっくりと浮上してくる
昨夜、一度果ててから風呂場に連れ込まれ、身体の内と外に残る名残りを洗い流しながら散々いちゃつき…もとい、悪戯され、果てにもう一度バックでイかされた…気がする
もう、最後の方は意識も朦朧としていて、記憶があやふや
ただ
ベッドの中に押し込められてから眠りにつくまで、ずっと優しく髪を梳かれる気持ちよさを堪能していたのは覚えてる
規則正しい心臓の音を子守唄代わりに、すごく安心できる温かなその場所に身を摺り寄せながら…
ふわ…と漂ってきた香ばしいバターの焦げる匂い
甘くて良い香りの…どこかで嗅いだ記憶のある、何かの香り
これ、なんだっけ…?
そう思いながら、なんだか凄く幸せな気持ちでいっぱいになる
そんな香り…
「…おはよう、七星」
そんな声と共に引き被っていた布団がめくられて、ふわ…っと耳にかかる髪をかき上げて目尻に落とされた、柔かなキス
「…ん…?」
「お目覚め?ブランチなど如何ですか?」
どこかおどけたような、笑いを含んだ優しい声音
その鼓膜を心地良く震わせる声に誘われるままに、ゆっくりと眼を開く
目の前に置かれ、お盆に載せられていた物が視界に映った途端、思わず目を見開いていた
そこにあったのは、こんがり美味しそうな焦げ目のついた、甘いメープルシロップの香り漂うフレンチトーストと、ミルクたっぷりのカフェオレ
「これ…!?」
片肘を付いて上半身だけをかろうじて起こし、そこにあったちょっと照れたような貴也の笑顔に問いかけた
「フレンチトースト、好き?」
返ってきた答えに、その照れた笑顔を凝視しながら頷き返す
「良かった。昔大吾に教えてもらってね、唯一まともに作れる自慢の一品!なんだ」
「…作って、くれたの…か?俺のために…?」
「当然!」
そう言って満面の笑みになった貴也が、食べやすいように一口大に切り分けていたフレンチトーストの欠片をフォークに刺して、俺の口元にかざす
「…っえ?」
「ほら、口開けて!」
「そ…んな、自分で…!」
「ダメ。たまには甘えて?」
「甘…える?」
「そ、俺はね、今、七星を甘やかしてます」
「…っ、」
多分、俺は今凄く変な顔になってると思う
甘える…とか、甘やかす…とか、そんなの、今まで一度だってした事もされた事もなくて、正直どうすればいいのか…分からなかったから
「甘えた事がないから分からない…って顔だね?じゃあ、ま、とりあえず食べてみて?」
そう言われて、戸惑ったまま…差し出された欠片を口に入れた
焼きたての香ばしい卵とミルク、バターの香りと、甘いメープルシロップの味が口の中いっぱいに広がる
凄く甘くて
凄く…美味しい
「美味しい?」
にっこりと満面の笑みを浮べた貴也が、嬉しそうに俺を見つめて聞く
トクン…と、全身を温かな何かが巡っていく
噛み締めるたびに広がる甘さが、全身に染み渡っていく
「…凄く美味しい」
そう答えた時には、自然と顔が緩んで笑みが浮かんでいた
「良かった」
俺のその笑みとその答えに、貴也が更に嬉しそうな笑みを浮かべる
そんな顔が見られた事が、凄く嬉しい
その笑みを、もっとたくさん見ていたいと…そう思う
そう思ったら、何の気負いも気恥ずかしさもなく、自然とその言葉が口をついて出た
「…貴也、好きだよ」
そう言ったら、一瞬僅かに栗色の瞳が見開かれ、次の瞬間、今まで見たことがないほどの極上の笑みが浮かんだ
「…七星は、甘やかすのが上手だね」
そんな言葉と共にその笑顔が迫ってきて、ゆっくりと唇が重なる
甘える事の嬉しさと
甘やかす事の嬉しさと
その甘さは痺れるほどに心地良い
求めて欲しければ
求めればいい
誰かを幸せにしたければ
自分も幸せになればいい
そんな事を、甘いフレンチトースト味のキスが教えてくれた
(完)
お気に召しましたら、パチッとお願い致します。
<この最後のシーンを漫画風イラストにしました。
見たい方はこちらから。>