ACT 44(完)












「・・・・ふぅん、つまり、七星は私の手伝いがしたいと、そういうわけ?」

七星と美月、麗・流・昴と、二手に分かれて車に乗り込み、七星が美月に自分の気持ちを正直に話し終えたところだ

「はい。俺はまだ高校生だし何が出来るか分からないけど、「AROS」を目標に進路を決めたいと・・・そう思っています」

「それは・・・つまり、あなたが華山家の後継者筆頭だって事を公開してもいい・・・と、そういう事かしら?」

「・・・ええ、構いません。俺は、母さんの事を一日だって忘れた事はないし、もう、秘密にしておくのも嫌なんです」

「そう・・・。いいわ、ただし、条件がある」

不意に語気を強めた美月が、七星をジッと見据える

「っ、は・・い」

思わず身体を強張らせた七星に、美月が社長としての威厳を持って言い放つ

「進路は海外の大学にすること。それも「AROS」にとって有益な人脈が多く期待できそうな名の知れた大学へ!後継者である事の公開は、あなたがその大学へ無事に入学できてからにするわ。
たくさん友人を作りなさい、七星。あなたにとって「AROS」での初仕事は、人脈作りよ。
それが条件。呑めるかしら?」

「・・・っ!?み・・つきさん、それって・・・」

目を見開いた七星に、美月が宙によく似た微笑みを浮かべる

七星が国内から出てから後継者である事を公開すれば、当の本人の居ない場所での騒ぎなど、すぐに下火になる

それに国内での華山グループに直接影響がでない、海外での「AROS」としての動きとなれば、他の重役達からの七星に対する攻撃も大した事にはらないはずだ

「あなたがそう言ってきてくれるのを、待っていたわ。大学への進路に関しては、もう既に協力者を桜ヶ丘学園に送り込んであるし。後はあなたの頑張り次第よ・・・。そう簡単に入学できるだなんて思わない事ね」

「え・・・?協力者?」

「ええ、そう。ま、もっとも、その協力者本人も自分がそうだとは知らないわ。何しろあなたが動くかどうかも分からないことだったから・・・」

美月の先を見通す目に、七星が嘆息する

もっとも、だからこそ今の美月があるともいえるのだが






やがて車は飛行場の特別離発着場へと滑り込む

VIPや皇族などのごくごく限られた人間しか利用できない、専用の施設だ

そこに、二つの飛行機が準備されていた

一つは北斗が次の仕事先である、ラスベガスへと向かうための専用機で

もう一つはハサン王子が帰国するための専用機だ

「・・・じゃ、悪いけど、俺はハサンに用があるから・・・。北斗に仕事頑張れって言っといてくれよな!」

飛行機に繋がれたタラップの下には、もうそれぞれの関係者が集まっているのが見て取れる

それを目にした流が、一人兄弟達から離れてハサンの居る集団の方へと駆け寄って行った

「指切るなよ〜流〜!」

麗がふふふ・・・といかにも楽しげな含み笑いを洩らしながら、遠ざかる流の背中に言い募る

「指・・・?なんだ?流の奴、一体何の用があるんだ?」

怪訝な表情で麗に問いかけた七星に、麗が小首を傾げて微笑み返す

「さぁ・・何なんだろうね?俺も凄く気になってるんだ」

「あっ!そういえば流、すっげー綺麗な剣持ってたよ!あれって、ハサンが腰にいつも挿してた奴だった!あれ返しに行ったんじゃないの?」

麗と七星の間に割って入った昴が、2人の腕を取ったかと思うと、北斗に向かって駆け出していく

「ちょ・・・昴!」

「早く行こ!美月おばちゃんに先越されちゃったよ!」

先に北斗と話していた美月が、七星たちと入れ替わりにハサンの方へと向かっていく

「美月さん・・!あの・・父さんのこと・・・」

すれ違い様に美月に声をかけた七星に、美月が振り返らずに返事を返す

「・・・宙の代わりにあなたを返して貰ったって言ってやったら、宙の代わりなんて誰もなれない・・ですってよ!・・・負けたわよ!」

「え・・・?」

ほんの一瞬、美月が七星を振り返る

「・・・いい父親じゃない」

「・・・あ」

ほんの一瞬垣間見えた美月の口元には、笑みが浮かんでいた

最愛の姉を北斗に奪われ、果てに永遠に失った・・・

その行き場のない複雑な感情が、全て、一人生き残った北斗に向けられたとしても、それは仕方のないことだった

そしてこれからは

共に失った最愛の物を、失ったもの同士でこれから育てるのだ

それぞれのやり方で

それぞれの思いを込めて

その最愛のものの名のもとに

美月の後姿に一礼を返した七星が振り返り、走り出す

「・・・・父さん!」

その先にあるものは、これから始まるスタートライン

それぞれが、それぞれの居場所(ゴール)を目指すための・・・!










=終=


お気に召しましたら、パチッとお願い致します。


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後書き

「七夜の星に手を伸ばせ」完結です。

お付き合い下さった皆様方、ありがとうございます。

ある意味、いろんな形のカップリングで・・・(笑)

書いている作者自身が一番楽しんでいたのではないだろうか・・・(^_^;)

この最終章に絡む、流&ハサンの「答え」は、漫画のほうで描いています。

興味ある方は、本編ー番外編ー漫画で読んで頂くと分かりやすいのではないかと・・・。

どのカップリングが読みたいか、アンケートにお答え頂くと、次の物が書きやすいかと(笑)
だれを書くか、凄く迷っているのでよろしくお願い致します。<(_ _)>



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