お題に挑戦。
<設定人物>
自サイト内オリキャラで2次創作。
<ハサン王子>
中近東でも並ぶ者のない大金持ちの王族の第一王位継承者
漆黒の髪と漆黒の瞳、褐色の肌の持ち主。
ミステリアスで妖艶な美形系。俺様気質。
<浅倉 流>
超メジャー級マジシャン北斗の息子・浅倉4兄弟の3番目。
紅い髪、紅い瞳の持ち主。
サッカーが得意なスポーツ万能タイプ。
精悍でちょっと強面な男前。ハサンの前では天邪鬼。
**********************************************
<お題・1>
01:砂舞う世界
「あ・・・れ・・・?」
ふと目を覚ました流が、パチパチと瞬きつつ目を開けた
地面についた手に感じる、妙な違和感
「え・・?砂?」
その感触に驚いて手を掲げてみると、サラサラ・・・と指の間から金色の砂が零れ落ちていく
その砂が零れ落ちる・・自分の指
その指を見た流が、え!?とばかりに目をむいた
「っ!?何だ?この手!?っつか、身体全体が縮んでんじゃん!!」
そう、今現在16歳であるはずの流の身体が、どういうわけか10歳くらいの体型に縮んでいたのだ
しかも着ている服装が、どう見ても中近東あたりのモノ。
なにやらもの凄く嫌な予感を感じた流の背後から、その予感が間違っていなかった事を裏付ける声が掛けられた
「どうした?流?」
どう間違っても、聞き間違いようのない、その声音!
「っ、ハサン!?」
振り向いた流の目の前に、やはり同じように10歳くらいの体型のハサンがいて
相変わらずの俺様気質そのままに、腰に手を当てて流を見下ろしていた
「どうした?じゃねぇ!こりゃなんだ!?何で身体が縮んでんだ!?っつーか、その前に何でお前がここに居んだよ!?」
「お前もやはりそう思うか?」
「は・・!?そう・・思うか?・・って?」
思いがけないハサンの答えに、流が気勢をそがれてハサンを見つめた
「・・・さっき、宮殿の中の宝物庫で古いツボを見つけてな。誤って割ったら、中から魔人が現れてツボから出してくれた礼に願いを一つ、叶えてやると言われたんだ」
その言葉に、流が最悪の展開予想に冷たい汗を感じつつ、問いかけた
「・・・なに、言ったんだよ?てめぇ・・!」
「・・・誰にも邪魔されず、何のしがらみもない所で流に会いたい・・・と言った」
「はいぃ・・ぃ!?」
プチ・・ッと流のコメカミに怒りの青筋が浮かび上がり、心の中で怒声を上げた
・・・この俺様王子が!この状況でシレっと言ってる場合か!
「てめぇ!なんて事言うんだよ!おかげでこんな砂漠のど真ん中じゃねぇかよ!しかも身体はちっせぇし!」
流が堪らず立ち上がって言い募りつつ、ハサンの背後に広がる荒涼たる砂漠を指差す
「・・・言われなくても分かってる」
それがどうした?と言わんばかりのハサンの態度に、流のコメカミに二本目の青筋がプチッと浮かぶ
「わ、分かってるって、お前な・・・!」
「それ以上叫ぶな。干上がるぞ」
ハサンの冷静な態度に、ウ・・ッと、流が押し黙る
頭上からは容赦なく照り付ける太陽
足元には渇ききって舞い上がる金色の砂
見渡す限り・・すな、スナ、砂・・・
「そうだ、それで良い。とりあえず行くぞ」
クルッときびすを返して歩き始めたハサンの肩に、思わず流が手をかけた
「ちょ、待て!行くって?どこへ!?」
首だけ傾げて振り返ったハサンが、フ・・と微かに笑み返す
その笑みに、不覚にも流の心臓が、一瞬、トクンと跳ね上がった
「心配するな。俺が流を守ってやる」
「っ!」
その言葉に、カァ・・ッと流の耳が真っ赤に変わる
どうやら、身体が幼くなったと同時に、感情も幼い頃に逆戻りしているらしい
「・・・っば、なに言って・・・!」
悪態をつき返そうとした流の行動を見透かしていた様に、ハサンが肩に置かれていた流に手を握ったかと思うと、そのまま先へと歩き出す
「おい、ちょ・・・っ」
「砂漠は俺の庭だ。黙って付いて来い」
そう言い放って、ハサンが流の手をギュ・・ッと握り返してくる
・・・・っの!コイツはほんとに、昔から俺様王子で・・!
心の中で悪態をつき、その手を振り解こうとして・・・それができない事を思い知る
ここには
ハサンと自分以外、誰も居ない
ハサンと初めて出会ったのが、この縮んだ身体の10歳頃
あの時は、ハサンの回りには召使や付き人が大勢居て
あからさまに王子と流の身分の差、というものを突きつけてきた
でも今は
ハサンを王子と呼ぶものは誰も居ない
二人の間にあったしがらみが、何もない
・・・・っかやろう、なんて願い事してくれんだよ・・!
ハサンと繋がれた手を見つめながら、知らず流のその手に力が込められていた