飼い犬









ACT 10











「・・・えっ!?」

いきなり真柴が俺の足を持ち上げたかと思うと、シンクの縁に膝裏をかけるようにして置いた

その無理な体勢に、湯船の中に沈みこみそうになって、慌てて真柴の首筋にかじりついた

「ま・・しば、溺れ・・・っ!?」

縁にかけられた足を戻そうとしたのに、真柴はそれを許さず、浮いた俺の腰の奥・・・

俺自身でだって触れた事のない後孔へ指先を差し入れてきた


「っ!?な・・・に!?」

「・・・言ったろう?ジュンを洗うんだよ・・・」

「え?・・・・っん!」


不意に真柴のもう片方の指先が、俺の、もう抜かなきゃどうにもならない状態のモノを扱き始めた

「あ・・・あ・・・・っ、ま・・・しば・・・!」

いつもの手慣れた手技
そのあまりの気持ちよさに、堪らず全身から力が抜けた

それを待っていたかのように、体の内部に差し込まれた真柴の指先が、グ・・・ッと、奥へと侵入する

「・・・ひっ!?」

物慣れないその感触と、緩急をつけて擦りあげられ、勃ち上がって湯の中に体液を洩らし続けるモノに加えられる・・・気持ち良さ

その気持ち良さに反して、体の内側に入り込んでくる異物感は、はっきり言って、気持ち悪い

だけど

それが、さっきまで自分が舐めていた真柴の指だと思うと・・・異物だなんて思えなくなる

ついさっきまで口の中で、舌先で、感じていた真柴の指
真柴の身体の一部・・・真柴そのもの

その、真柴が、自分の身体の中・・・一番奥深い所に、居る
そう思うと、腰の奥にゾク・・・ッとするような疼きが湧き上がってくる

まるで何かを探るように俺の身体の中・・・で蠢いていた真柴の指先が、ある場所を刺激した時

「っ、ひゃ・・・っ!?」

ビクンッと身体が勝手に跳ねた
同時にイキそうになって、思わず真柴の肩口に歯を立ててやり過ごす

「・・ッ、こら、ジュン、歯んだとこ、舐めて」

首筋に噛り付くようにして真柴に抱きついている俺の耳元に唇を寄せ、真柴が背筋にゾクリ・・・ッとクル、熱を孕んだ声音で囁きかける
慌てて立てた歯を離して、舐めようとした・・・けど

「・・・んっ、で・・も、あ、あ、あ・・・っ!」

真柴の指先が、何度もその、俺が反応した場所を確認するように内壁を擦り上げて来ては、焦らすように引く

いつの間にか身体の中に居る真柴の指が、増えていて・・・入り口から奥へと内壁の襞を押し広げるように擦り上げ、敏感な粘膜を引っ掻き、長い骨ばった指が抜き差しされる

「洗うんだよ」と言った言葉そのままに、身体の内側から緩急をつけて擦り上げられて・・・

さっき身体が跳ねたポイントを、真柴の指先が何度も確めるように刺激した

「ま・・・しばっ!やだ・・そこ・・・ッ!変にな・・・くぅ・・っ」

叫んだ途端

我慢できずにイってしまった

勃ち上がっていたモノを刺激されてたから・・・だけじゃない
明らかに
後孔から体内に差し入れられた・・・真柴の長い指

その指先が探リ当てた場所を、真柴が正確に何度も擦りあげたせいだ

イクと同時に、真柴の指が体内から引き抜かれて行く感触・・・

「・・・あ・・・っ!」

その

なんとも言えない・・・・喪失感に、全身に震えが走る



・・・・・・なに・・これ?身体の奥が・・・熱・・・いっ



さっき、イッたばかりなのに

身体の芯に疼きが残っている

今まで、こんな風になったことなんてなかった
いつもは、真柴の手でイカされたら、もう、十分だったのに・・・!

「・・・・ジュン?」
「え?」

不意に聞こえた真柴の声すら、なんだか熱く感じる


「・・・・もっと、ほしい?」


見据えられた真柴の瞳と、その、艶を含んだ問い

ただ、もう

まるで熱に浮かされたように、頷き返していた










いつもは丁寧に俺の身体を拭くくせに、俺を湯船から引き上げて、バスタオルで俺の体をザッと拭いたかと思ったら、そのまま抱き上げられていた

「え・・・?ちょ、まし・・・っ!?」

疑問を口にする間もなく

次の瞬間、背中に感じた軽い衝撃

照明を落とした部屋の中で、俺を組み敷いて、暗い中でも輝きを失わない、真柴の双眸に囚われる



そりゃ

一ヶ月前に真柴に初めて身体を洗われた日から
そういう意味で、飼い犬なんだって、分かってたけど

けど・・・!

じゃ、何で真柴は、この一ヶ月、何もしてこなかったの?

その理由が分からなくて困惑する



「な・・・んで?真柴、この一ヶ月、全然そんな気、なかったのに・・・!」


少し非難を帯びた口調になった

だって、

多分、俺、その事で、ずっと悩んでた
飼い犬・・・たって、ただの毛色の違った珍しい品種で愛玩犬・・・真柴にとっての俺って、そんな程度で

こんな風に、直に触れ合うような事、する気にもならないんだ・・・って


ずっと、悩んでたから


だからきっと、無意識に


真柴に魅かれてるってことに、気が付かない振り、してた・・・



「あそこは、みっちゃんの病院だし、ジュン、ケガしてたし、俺の事も何も教えてなかったし・・・。だから、我慢してた・・・それだけ」

「え・・・じゃ、服、脱がなかったのも・・・?」

「自分で歯止め作っとかないと・・・ヤバかったんだ。ジュン、とんでもなく煽ってくれるから、毎日、精神苦行してるみたいだった」

俺の非難めいた口調に抗議するように、真柴が不機嫌そうな表情になってそんな風に言う

「俺、煽ってなんか・・・っんんっ!」

不意に真柴の指先が俺の脇腹をツイ・・・ッと撫で上げて、声が漏れた

「その顔と声だけで、十分・・・・」

言いながら、わき腹を撫でた指先が、胸の突起をギュッと摘み上げてくる

「は・・・っや・・・っ」

思わず逃げを打って突っぱねた腕を、真柴が易々と掴み上げて顔の両脇でシーツの上にきつく戒める

ズイ・・・ッと寄せられた真柴の瞳には、いつもの無表情で感情の読み取れない色は微塵もなくて

まさに、獲物を前にした、飢えた獣の色そのもの



・・・・・あ・・・俺、真柴に喰われるんだ



何の不自然さも感じずに、そう思った

怖いとか、怯えとか、そんなものなんて、ない
狩るモノと狩られるモノ

何かで見た、肉食獣に襲われた草食獣の、最後の抵抗をやめた静かな目

あれって

本能的に自然の摂理に従ってるからなんだ
抗たって、どうしようもない・・・そう、本能が告げるモノ

俺を食おうとしてる獣・・・真柴の眼光の鋭さに曝されて、俺はまるで蛇に睨まれたカエルみたいに、動けない


「・・・・本気で繋ぐから、覚悟しろよ」

「え・・繋ぐ?」

「そう、もう、逃がさないから・・・」

「っ!?」


そう言うと同時に真柴が俺の首筋に噛み付いた

いや、実際に噛んだ訳じゃないけど、喰いちぎられるんじゃ・・・?!と思えるほど思い切り吸いあげられて・・・キスマークを付けられたんだと分かる


「ま・・・しば!?」

「俺の飼い犬って言う印」


顔を上げ、ニヤリ・・・と真柴が意地の悪い笑みを浮べる

多分、タートルネックでも着なきゃ丸見えの位置
ジン・・・と熱く痺れる熱を孕んだその印は、真柴のモノだっていう、首輪代わりの印・・・!?

ひしひしと肌で感じる、隷属感

自分がどれだけ煽ってたか、思い知らせてやる・・・そんな身勝手な言葉を告げた口が、そのまま、俺の唇を塞いだ

「は・・・っん・・・・っ」

一瞬、キスマークをつけられた時と同じ感覚に襲われた


喰いちぎられる・・・!?


そんな表現しか思いつかないほどの、荒々しいキス

踊りこんできた獰猛な肉食獣を思わせる舌が、俺の口の中で怯えていた舌にまとわりつき、引き抜かんばかりの勢いで吸い上げてくる



・・・・う・・わ、な・・・に、これ!?



考えてみたら、真柴との、初めてのキス
でも、何で真柴が今までキスしてこなかったか・・・すぐに理解した

犯されて、征服されて、喰われていくような、今まで味わった事のない感覚
何の心構えもなく与えられたら・・・きっと、怖さと怯えで身がすくむ



・・・・これがキス!?



息もつけないほど重なって、角度を変える度に深くなっていく
乱暴に暴れまわる舌先が、容赦なく、俺の舌に、粘膜に、吸い付き、刺激する

「ん・・・ふっ・・・んっ」

感情が追いつくより先に

気持ちよさを覚えさせられた身体が反応する

真柴が奪い去るもの全てを差し出して
真柴に応える


頭の芯が熱く潤んで
何もかもが溶け出していく


ただ


今は、もう


真柴がくれる感覚だけが、俺の、全て




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