飼い犬
ACT 3
「え・・っ、あ・・の、ちょ・・・・っ!?」
俺は慌てて真柴の手を掴んで止めた
だって・・・!
「なんで?風呂行くのに服脱がないでどうするの?」
そう言いながら、至極当たり前の顔つきで、真柴が俺の着ていた服をどんどん剥ぎ取っていくからだ
「い、いや、だから・・・!自分・・で・・・つっ!」
身を捩ろうとして、腹の打撲の痛みに思わず声がでた
「ほらみろ。大人しく脱がされてろ。腕だってまともに上げられないだろ?」
「う・・・っ」
反論の余地がない
確かに、まだ立っているのが精一杯で、おまけにフラフラする
一人で服を脱いでいたら・・・それこそ、一体どれくらいの時間がかかる事やら・・・
「洗うのは慣れてるから、大丈夫だって」
言いながら、本当に要領よく、真柴はあっという間に俺を裸に剥いてしまう
・・・洗うのが慣れてる・・・?それって・・・・
「・・・・ひょっとしなくても、動物を洗い慣れてる・・・ってこと?」
「ん?ま、そんなとこ。もっとも、人間洗うのは初めてだけど」
・・・だよな、ここ、動物病院って言ってたし・・・って!まさかこの風呂!?
一瞬、動物用の風呂なんじゃ!?と、思いながら引っ張り込まれたそこは、普通に普通の人間用のユニットバスだった
有無を言わさず椅子に座らされつつも、ホッと安堵のため息をつく
「じゃ、まず頭から行くから、縫ったところ滲みると思うけど、我慢して」
そう言って、頭上から浴びせられたぬるめのシャワーの温水に、縫った傷痕だろう・・・痛みが駆け抜ける
思わず歯を食いしばって、その痛みをやり過ごしていたら・・・
椅子に座って俯いている状態の俺の髪に、真柴の手が差し込まれた
ゆっくりと・・・傷に触れないように最新の注意を払いながら、髪にこびりついた血のりを解していくのが分かる
ふと目を開けると、滝のように流れ落ちる温水の色が、赤い
・・・・結構、血、出てたんだな・・・
その赤さに、思わず目を見張った
さっきからフラフラするのも、貧血を起こしかけてるせいかもしれない
ゆっくりと、髪をすくように洗う真柴の指先の感触が・・・異様に気持ちいい
洗い慣れてる・・・と言っていたのは伊達じゃないな・・・なんて思う
もっとも、それって動物なんだよな・・・と苦笑いも浮かんだけれど
だんだん・・・と温水の色が透明に変わる
流れ落ちる滝の壁に浮かぶ・・・・ブルーグレイの髪
ああ、そうだ・・・この色だったんだよな・・・と、あきらめとも嘲笑とも取れない乾いた笑みが、口元に浮かんだ
「・・・やっぱ、すげーキレイな色・・・しかも地毛なんだ」
キュ・・・ッというシャワーを止める音と供に、そんな言葉がふってくる
俺はハッとして頭を上げた
目の前に
俺の髪を指先に絡め取って見つめている・・・真柴の嬉しそうな笑顔
「な・・・んっ!?」
言われた言葉が信じられなくて・・・思わずその真柴の笑顔を凝視してしまった
こんな髪の色が!?
なんだかハッキリしない色だとか、濁ってるような色だとか、薄汚い色だとか、染めるの失敗したの?だとか
今まで散々そんな風には言われたけど、「キレイ」なんて・・・!
ましてやこんな風に真顔で、間近に言われたのは・・・初めてだ
「濡れててこの色みだもんな、乾かすのが楽しみだ・・・・って、あれ!?」
ジ・・・ッと真柴の顔を凝視していた俺を間近に見ていた真柴が、不意に目を見張って更に俺の顔に顔を隣接してくる
「っ!?ちょ・・なに・・・っ!?」
仰け反ろうとして・・・背中に走った鈍痛に、思わず崩れ落ちそうになって・・・真柴の腕の中で抱きとめられる
「・・・っと、大丈夫か?それよりお前・・・・」
胸の中で抱き抱えられた格好の俺の顎に手をかけて、無理やり上を向かせた真柴が、コツン・・・と額同士をぶつけて俺の目を覗き込んでくる
「・・・やっぱ、そうだ・・・ジュンの目、黒いんじゃなくて、青いんだ!」
秘密を発見したかのような、嬉々とした声音
よく気が付いたな・・・!と、本気で驚いた
確かに俺の目は、ただ黒いんじゃなくて、深い深い青色が何重にも重なったような色をしている
パッと見は黒・・・にしか見えないから、今まで母親以外にそれを指摘された事なんて、なかった
そういえば
泣いている時とか、目が潤んでいる時とかが、一番青い色が際立って見えるわね・・・とか母親が言っていた記憶が甦る
もう随分久しく泣いてないから、すっかり忘れてた
そうか、今、頭洗われて・・・目も侵入してきた温水で潤んでるんだっけ・・・
だからだ
驚いている俺の顔からゆっくりと顔を離した真柴が、実に嬉しそうに笑っている
・・・なんで?何がそんなに嬉しいんだ?
こいつ、本当に訳が分からない
本気でそう思って茫然としていたら、手にボディソープをつけた真柴の素手が、背中を撫で付け始めてビックリした
「っ!?な、なに!?」
「なに・・・って、体洗ってるんだけど?」
「だ、だって・・!なんで、素手!?」
「え?普通素手だろ?あちこち擦り傷できてるし・・・素手じゃないと加減がわかんないから逆に痛いと思うけど・・・?」
真顔で言われて気が付いた
・・・そうだよ・・・動物洗う時って・・・素手だよな・・・!
誰かが飼ってた犬を洗う所を見たことがある
あの時、確か、素手で洗っていた
「っ、い、いいよ・・・!洗わなくっても・・・!」
「だめ。血とか泥とかこびりついてるし。イイコだから言うこと聞きなさい」
「・・・っひ!」
スルリ・・・とボディソープで滑りの良い指先で脇腹を撫でられて、ビクンっと体に震えが走る
「・・・あ、ここ、ひょっとして弱かった?」
笑いを含んだ声音がそう言って、再び、しかも今度は明確に意図を持って撫で上げてくる
「ぅ・・・くっ、や・・めろって・・・!」
くすぐったさと羞恥に耐えかねて、その手から逃れようとしたら・・・
「・・・だめ。ジュンはもう俺の飼い犬になったんだから」
そんな言葉が耳元に落とされる
「え・・・!?」
・・・・か、飼い犬・・・って、そういう意味!?
そりゃ
飼う・・・っていう言葉の裏にそういうエロい意味があるって事を知らないほど世間知らずでもない
でもあの時は、本当に意識も半分なくて、このまま放置されたら完璧に死ぬなぁ・・・とか思って、もう、どうなってもいいや・・・と思ったのが正直なところ
その結果なんだから、今更どうしようもない
逃れようとして失敗し、ユニットバスの床の上に膝をついた俺を、真柴が背後から抱き込むようにして素手で身体を洗い続ける
何とかして逃げ出したい・・・!そう思ってはいるのだけれど、擦り傷や打撲には優しく触れ、緩急をつけて洗うその手の暖かさと感触が・・・!
・・・・う・・そ!?どうしよう・・・これ、凄く・・・気持ちいい・・・かも
人の手の感触が、こんなに気持ちいいものだなんて、知らなかった
その上・・・!
背中を洗っていた手が、前の方へ進んで来て・・・胸の突起に触れた瞬間、その気持ちよさに思わず声が出そうになった
・・・うそ・・っ、何?俺、感じてるの!?嘘だろ・・・っ!
もう、なんだかそれ以上やられると、確実に声が出る・・・!
その恥かしさに耐え切れなくて、四つん這いになって必死で逃げようとした
すると
「っうわ!?」
思わず叫んでしまったありえない刺激
微妙な刺激に勃ち上がりかけていたそこを、真柴がギュ・・ッと握りこんできたのだ
それだけならまだしも、真柴の手は握った手を上下に扱いてそこを育て上げていく
「は・・・っ、あ・・・・っ」
思わず、声が漏れて全身に震えが走る
「・・・なんで逃げるの?気持ちいいんでしょ?」
四つん這いになった俺の上に覆いかぶさるようにして、真柴が俺の耳元にそんな囁きを落としてくる
「っ、ちょ・・ぃや・・だ、やめ・・・・っ」
「嫌がらなくていいよ、ジュンが気持ち良くなるようにやってるんだから」
「や・・・だ・・って・・・っ」
「・・・ジュン、こういう風に勃っちゃったら、抜かなきゃどうしようもないんじゃない?」
その言葉に、逃れようとしていた全身から力が抜けた
おまけにもう片方の真柴の手は胸元を洗いながら、その突起を重点的に指先で挟んだり押しつぶしたり・・・付かず離れずのもどかしい触れ方をしたり・・・俺の身体がその刺激にあわせて震えるのを楽しむように、撫で回してくる
「・・い・・やだ、やめ・・・・っあ・・・あ・・・っ」
十分に育てられて張り詰めたそこから流れ出る体液は、もう止めようがないくらいダラダラ・・・と湧き出ている
真柴のボディーソープで滑りの良い手が、更に湧き出る体液で濡れ、粘度のある水音が反響するユニットバスの中でこだまする
その音が、更に体の自由を奪う
逃れたいと思っている思考を、奪い去っていく
四つん這いになって背後から真柴に抱かれている様は・・・本当に犬みたいだ・・・と僅かに残った理性が自分をあざ笑う
「あ・・・も・・・・ダメ・・・・っ、いく・・・・いっちゃう・・・・っ」
もう、抗う術もなく羞恥を忘れた口から、そんな言葉が流れ出る
「・・・ん。いって?飼い犬の下の世話も飼い主の大事な仕事だから・・・」
耳朶を食みながら注がれた言葉
同時に荒々しく真柴の手が上下して、俺は初めて自分以外の他人の手でイカされる気持ち良さを、真柴によって身体に刻み込まれてしまったのだ