野良猫
ACT 17(光紀)
濡れた髪もそのままに、残っていた祐介の服を剥ぎ取って身体をベッドの上に押し倒し、馬乗りになってその裸体を見下ろした
フットライトと間接照明だけの部屋の中で、初めて間近に見る祐介の身体は、ブロンズ像みたいに光沢があって張りがあった
少し浅黒い肌、無駄な肉なんて一切付いていない、しなやかな肢体・・・
俺みたいにお遊び程度に鍛えた身体じゃなく、隙のない、なめし革の様にしなやかな、実践仕様のそれ
思わず見惚れて、それを味わってみたい衝動に駆られた
張り詰めた筋肉で盛り上がった胸に残る水滴に顔を寄せ、それに舌を伸ばして舐め取ってみる
吸い付くことさえ拒むようなその弾力と張りは、今まで一度として味わったことのない極上の味わいだった
「・・・光紀、身体、反転させて」
そんな俺の行為を目を細めて見ていた祐介が、不意に上半身を起こして俺の腰に手を伸ばしたかと思うと、グイッと俺の身体を反転させて自分の頭の上に引き寄せる
「ちょ・・、ゆうすけさ・・・っ!」
もっと、その張りのある肌を味わっていたくて抗議の声を上げたのにグ・・ッと腰を引き落とされて、勃ち上がっていたモノに再び祐介の舌が絡み付き、同時に後孔にも祐介の長い指が入り込む
「あ・・・っ」
思わずビクンと身体が跳ねて、祐介の身体の両脇に付いていた手から力が抜け、崩れ落ちそうになった身体を必死に支えた
でも、身体を反転させられたせいで俺の顔の下には、同じく張り詰めて勃ち上がった祐介のモノがあって
俺は片手で身体を支えると、残った手でその根元を上下に扱きながら先端を咥え込んだ
今までフェラなんて、ほとんどやった経験がない
ましてや、祐介のそれは、俺が今まで見た中で一番大きくて、ノドモトまで咥えこんでも、とうてい根元まで含みきれなかった
それでも必死になって祐介が俺にすることを真似、筋に沿って尖らせた舌先を這わせ、くびれを甘噛みし、手で根元を扱く動きにあわせて口も上下させ、それを更に熱く猛る様に育てていった
けれど、身体の内側を探る指はその数を増やし、祐介は俺が祐介に与える以上の快感を与えてきて、その度に口の動きが止まってしまう
「・・・はっ、ん、・・・ぅ・・・」
いつしか祐介を含んでいた口はかろうじてその先端を含むことしか出来なくなり、それさえ喘ぎ声で叶わなくなる
と、不意に後孔から祐介の指先が引き抜かれ、その喪失感に背筋が反り返った
「っ、あ・・・くぅ・・・っ」
「・・・光紀、」
呼ばれた名前と供に起き上がった祐介に易々と上下を入れ替えられて、シーツに背を押し付けられたかと思うと脚を割り開かれて、喪失感で収縮しざわめく入り口に熱い屹立が押し当てられた
「は…っ、や、ま…って…!」
指なんかとは明らかに違う質量と熱さに、どうしても怖気が先立って思わず両手がシーツを握りしめる
その手を取った祐介が、指先を深く絡ませて顔の両側に押し付け、覆い被さるようにして顔を間近に寄せて俺の顔を覗き込んできた
「…光紀、俺をちゃんと見て。初めて光紀を犯す男の顔を…。一生忘れられないように」
そう言った祐介の顔は、犯すなんていう言葉が一番似つかわしくないほどに切なくて
そんな言葉でしか忘れるな…と言えない祐介との関係を思い知る
だけど、次の瞬間祐介の腰が大きくグラインドして、正に犯すという言葉に相応しい荒々しさと息を呑む圧迫感を伴って、灼熱の熱さが身体の中へと捻じ込まれていく
「ーーーーーーっ!!」
痛み…を感じたのはその最初の一瞬だけだった
バスルームで祐介に塗り込められたボディオイルと、時間をかけて慣らされたそこは、口に含むのさえやっとだったはずのものを苦も無く呑み込んでいく
「あ…や…、中に入って…く、祐介さ…が…」
さっき口で味わい指で確めたその形が生々しく内部で蠢き、身体の中に自分以上に熱い体温と違うリズムを刻む鼓動にも似た脈動を感じて、思わず絡まっていた指先に力を込める
焼け付くような熱さと、駆け抜けた痛み
隙間も無くみっちりと埋めつくすそれ
服も、皮膚さえも、なに隔てるモノ無く…自分自身でさえ触れることの叶わない身体の一番奥深い内側で、祐介自身の形と熱さと波打つ脈動を感じている
今まで一度だって、こんな風に他人を感じたいと思ったことなどない
自分の中に他人を受け入れるなんて、考えたこともなかった
それなのに
全身を満たすこの充足感はなんだろう?
自分がいかにこの感覚を待ち望んでいたか…感情よりも先に身体が教えてくれる
奥まで埋め込まれた熱い楔が、内壁を探るようにゆっくりと抜き差しを始めると、収縮する粘膜とともに時々ビクッ!と電気にも似た疼きが駆け抜ける
「は…っ!あ…、…んっや…ぁ」
俺の顔を覗き込んだまま、祐介がその表情の変化をひとつとして逃すまいとするかのように、深く、浅く、少しづつ角度を変えて腰を打ち付けてくる
「あ…ぃや、そ…こっ!!」
何度目かの突き上げの時、突き抜けた快感に背筋が仰け反り、言葉とは裏腹に引いていこうとした祐介の腰に思わず脚を絡めて引き止めていた
その途端、身体の内側がキュゥッと締まって、引こうとした楔をまるで奥に向かって引きずり込もうとするかのように収縮する
同時に俺の中で、ドクンと祐介が震えて体積が増す
無意識に腰が揺れて、その増した体積を快感の源である部分に擦り付けた
「ク…ッ!み、つき!」
一瞬眉根を寄せた祐介が、身体の中で大きく震え、駆け抜けた快感を耐えるように唇を噛み締めて顔の両脇で縫いとめ絡めていた指を解いたかと思うと、腰に絡ませていた脚を掴まれて解かれ、大きく割り開かれた
「っ!?祐介さ…っ!?」
抗議の声を上げようとした途端、一番感じるポイントを巧みに避けて容赦なく突き上げられた
「あ、く、ぃ…やっ、や…だ、おね…が…ぃっ」
後ほんのちょっとでイケるのに、その一歩手前でスン止めされる…焦れて焦れて、神経の焼ききれそうな快楽しか与えられず、祐介の肩に片脚を担ぎ上げられて、自ら腰を動かす事すらさせてはもらえない
「ゆ…うすけさ…っ、ぃや…っゆう…祐介…!」
いつしか祐介の名前を呼び捨てで呼びながら、懇願するように涙の滲む視界を見開いて、祐介の獰猛なくせに愁いを帯びてどこか切ない顔を必死に見つめていた
「祐介…っも…ぅ、…っねがい、ゆうす…っ」
うわ言のように何度も懇願し、それでも与えてはもらえず、苦しくて苦しくて、もうこれ以上はムリ…ッ!と思った瞬間、唇を塞がれて正確に一番欲しかった場所をピンポイントで激しく突き上げられた
「−−−−−−ッ!!」
上げたはずの嬌声は全て祐介に奪われて、覆い被さっていた祐介の腹に白濁を散らすと同時に、身体の内側を熱い奔流が満たしていく
ドクドクと熱く波打ちながら吐き出される体液を、一滴たりとも残さず搾り取ろうとするかのように、内壁が勝手に蠕動する
互いに弛緩して…落ちて来た祐介の背に腕を廻して、身体の中から祐介が出て行こうとするのを引き止めた
「み…つき?」
「…お…ねがい、俺が眠るまで中に居て。でも、」
「…でも?」
「俺が目を覚ます前に、俺の前から居なく…なってて」
「!」
……夢に、しなくちゃいけないから
言葉に出来なくて唇を噛み締めたその先を見透かしたように、祐介が大きな手で俺の髪を梳くように何度も撫で付けてくる
「…おやすみ、光紀」
その声が祐介の胸の中で聞いた、最後の言葉だった