ヴォイス
ACT 11
フ・・・ッと高木の口内を犯していた久我の唇が、離れた
「・・・・今日は、もう少し、付き合ってもらって良い?」
間近で聞こえた久我の声に、高木の中で芽生えたズルさが勝手に言葉を紡ぎだす
「・・・・好きに・・しろよ」
「え・・・?」
「付き合ってやるよ・・・最後まで。そう言ったろ?でも、俺、演技も何も出来ねーし、男となんてやったことないからやり方なんてわかんねーぞ?」
高木が開き直ったように言う
目隠しのせいで久我が、今、どんな表情でその答えを聞いているのか分からない
だからこそ、言えた言葉
でも
仕掛けてきたのは久我の方なのだし、もともと久我は男もいけるバイでリバOKだと言っていた
つまりそれは
既に他の誰かと経験済み・・・ということで
高木とやったところで、どうということはないのだろう
そうでなければさっきみたいな濃厚なキスを仕掛けてくるわけがない
さっきのキスは、どう考えても相手をその気にさせる為のキス・・だったのだから
「・・・マジ・・で?」
「ああ・・・。あー・・でも、まさかリアンがユリウスに突っ込まないよな?」
久我の少し戸惑ったような声音に、ふとよぎった不安を高木が口にする
さすがに突っ込まれるのには抵抗がある
それに
これは久我のボイスの練習のためなのだ
だったら、当然、攻めはユリウスでなければならないはず・・!
「・・・分かってるって」
聞こえた久我の笑いを含んだ声音
その返事に、高木が安堵のため息をつく
「・・・なら、いーよ。で?俺はどうすれば良いわけ?」
一瞬の、間
「・・・何も・・しなくて良いよ。ジッとしてて・・・」
「え・・・?」
いつもの久我とは少し・・・ニュアンスの違う声音
久我?と、問いかけようとして薄く開いた高木の唇を、再び久我が塞ぐ
さっきより一層深く、激しく口内を蹂躙されて、高木がその気持ち良さと息苦しさに喘ぐ
時々、息継ぎの間を与えるかのように重なる唇が離れ、久我が艶めいた声を高木の唇に触れながら注ぎ込む
「・・・・好きだ」
「お前さえ、いてくれれば」
久我の艶めいた声に、高木の理性がなし崩しになって、思わずその身体を抱きしめたい衝動に駆られる
けれど
「・・・好きだ・・ユリウス」
不意に注がれるその名前に、ハッと理性が呼び戻される
これはただの演技
ただの練習
何も見えない闇の中で、浮かぶ漫画のシーン
今はそれを見ていれば良い
そうすれば、自分を貪っている久我を・・・本気にしなくて済む
高木の口腔を蹂躙していた久我の舌先が、ゆっくりと首筋から胸元へと降りていく
いつの間にかカッターシャツのボタンが外され、寛げられた胸元に久我の指先が滑り込み、探り当てた突起をゆっくりと捏ね回す
「ぁっ・・・!」
高木の口から小さな声があがる
鎖骨を食んで降りてきた久我の唇が、もう片方の突起を含み、舌先で転がすようにその部分を刺激した
「・・・んっ」
男にとってほとんど飾りでしかないようなその部分を、そんな風にいじられた事などない
知らない刺激に勝手に身体が反応する
高木の身体がビクンと反応する度、久我は執拗にその部分を攻め立てた
・・・・・・・・こ・・いつ・・・!
手慣れているとしか思えない、その煽り方
久我に良いように扱われるのが悔しくて、高木が息を詰めて上がりそうになる声を殺す
だいたい
こんな風にやられるのはリアンの方であって、ユリウスじゃねぇだろ・・!
自分からは出来ない事を棚に上げ、高木がそんな義憤で煽られる一方の身体の熱さに耐える
けれど
不意に聞こえた金属音に、思わず高木が半身を起こそうとした・・・が、
「ジっとしてろって言った・・・!」
鋭い久我の鶴の一声に、高木が再び深々とベッドに背中を預けた
高木の方から最後まで付き合ってやる・・・と言ったのだ
今更・・・だ
カチャカチャ・・・とベルトを外す音が聞こえ、下着ごとズボンが引きぬかれていく感覚
羞恥だとかそんな物を覚える間もなく、既に今までの刺激で半分以上育ってしまっている高木自身に、スル・・と久我の指先が絡みついてきた
「・・くっ!」
直に加えられる刺激の強さに耐えようと、高木がシーツを握り締める
指先で何度か扱かれて先走りを滴らせたモノが、不意に生温かいもので包まれて、高木の背がその刺激に堪らず浮く
温かな濡れた粘膜で覆われ、吸い上げられる感覚
舌先で舐め上げられる感触
どう考えても、久我が自分の口で奉仕しているとしか思えない、その快感
「・・・はっ、く・・ッ!」
久我!と叫びそうなった言葉を、高木がかろうじて堪える
その名を呼んでしまったら、現実に引き戻されそうで
久我が仕掛けてきたんだから・・・と、全部久我のせいにして
そうしなければ何も出来ない・・・自分のズルさを突き付けられそうで
高木が目隠しの下でギュッと更に強く目を閉じて、偽りの世界に逃げ込む
今まで描いた漫画のシーンでも、こんな風にフェラするシーンがある
頭の中に浮かぶ漫画のシーンを思い起こしていなければ、とてもじゃないがその羞恥に・・その不甲斐なさに耐えられない
久我の咥内に咥え込まれ、イク寸前まで育て上げられて・・・
不意にその刺激がなくなった
無意識に、久我の喉の奥に向かって突き込んでしまいそうになる衝動を必死に押さえ込んでいた高木が、乱れた呼吸を整えようと深呼吸する
その大きく上下する高木の胸の横で、ベッドのスプリングがギシリ・・・としなる
次の瞬間、高木の腹の上に柔らかくて温かなモノが乗りかかったかと思うと、先ほどイク寸前で放置され、いまだに角度と硬度を保ったままのそれに、久我の指が添えられた
そこに、ひんやりとしたジェルのような物が塗られていく
・・・・・・・・あ・・これって潤滑剤とかって言う奴?
そんな事を高木が思っている間に、その滑りと供に生温かくてキツイ・・・何かが高木を包んで呑み込んでいった
「・・・んっ、く・・・う・・・っ」
同時に聞こえた、久我の息を詰めたような声音
その声と、ギチギチにキツイ何かに呑み込まれていく刺激、腰を挟み込むようにして置かれた、久我の太股の感触
そして目を閉じた中で浮かぶ、リアンとユリウスの濡れ場
目隠しされて見えなくても、はっきりと分かる
久我の体内に咥え込まれて行っている・・・高木自身
キツイほどに締め付けられるその刺激と、久我の中の熱い粘膜に包み込まれる感覚に、高木自身が反応してドクン・・ッとその質量を増した
途端
「あっ・・・んっ」
今まで聞いたことがなかった・・・久我の鼻にかかった艶めいた声音とともに、キュ・・・ッと更にキツイ締め付けが、高木を襲う
「・・・っく!」
思わず呻いた高木が、その波をやり過ごすかのように深呼吸して吐息を吐き出した
その高木の胸のすぐ横でギシリ・・・ッとベッドが軋む
両脇に手をついた久我が、ゆっくりと高木を呑み込んだまま腰を動かし、浅い抜き差しを始めた
きつい狭い入り口で締め付けられながら、熱くて弾力のある粘膜で敏感な先端を扱かれる感覚・・・
それは、さっきまで久我の口の中で扱かれて感じていた気持ち良さなどよりも、何倍も気持ちの良いものだった
ゆっくりと、久我のペースで動くその動きがもどかしくて、じれったくて・・・
もっと強い刺激が欲しくてたまらない
自分を咥え込んで腰の上に乗っている久我を、高木が下から突き上げたい衝動に駆られて・・・足を仰け反らせてその欲望に耐えていた
「あ・・・ん、ん・・・っ」
ふわり・・と高木の耳朶に久我の熱い吐息と供に、切なげな喘ぎ声が落とされる
縋り付くかのように高木の肩口に手を置いた久我が、高木の首筋に鼻先を擦りつけ、腰の動きに合わせてその悩ましい声音と、濡れて艶めいた吐息を高木の耳元に注ぎ込んでくる
「・・・はっ・・・ん、お・・まえが、いい」
「お前・・以外、いら・・な・・・っん」
「あ・・・あ・・・っは・・・ぁっ」
ボイスドラマで依頼した台詞と喘ぎ声・・・
頭の中では分かっている
でもその声と、久我の体内に咥え込まれて与えられる刺激は、高木とっては強すぎた
「く・・ぅ・・っ!」
背を仰け反らせ、久我の体内に自らを深く埋め込んで
あっけなく達した高木は、久我の体内にその歪んだ欲望を放ってしまった
「・・・んっ」
同時に、まるで注ぎ込まれた物を搾り取ろうとするかのように久我の内壁がドクドク・・・と精を放ち続ける高木を締め上げる
荒い息を吐きながら弛緩してベッドに深々と沈み込んだ高木が、その動きと供に久我の体内から引き抜かれていく
一番キツク締め付けてくる入り口が、引き抜かれていく高木自身から残った精を余すことなく扱き取る
その締め付けと余すことなく搾り取られる感覚
それは
今まで高木が味わった事で、最高の快楽だったと言って良い
・・・・・・・・やば・・・い、これって・・・!
絶対、病み付きになる・・・!
そんな予感を感じながら、高木が弛緩しきった身体で荒い息を吐き出していた
これ以上ないほどに満足した身体
だが
その高木の心は、身体とは裏腹に、苦々しい罪悪感と情けなさでいっぱいだった